自分の自分史は……

自分史活用アドバイザー 泉正人

 最近よく、他人には自分史の作成を勧めておきながら、自分ではなかなか作らない理由を考えるようになってきました。
 自分のこれまでの人生を振り返ってみて、何か楽しいことはあったのかと思う時、まあ殆ど思い浮かばないのです。これまで生きて来た時間の殆どが苦行というか修行というのか、まあそんな感じだろうと思います。
 自分史活用推進協議会が提唱するように、過ぎし過去を肯定的に考え直すべきだと思いつつも、苦行・修業が現在もまだ続いている状況においては、心穏やかに過去を見詰め直すことはできないような気がするのです。
 更には、現実の問題として時間がないということもあります。本業をして、副業をして、更に本作りをして、未だ諦めない資格の勉強時間をどう作り出そうかと考え、生涯の夢である作家になるための原稿をいつ書こうかと考える時、そこに更に自分史を紡ぐ時間を見出すことは不可能だと思うのです。
 これらは私自身の課題だとしても、私のように自分の人生を肯定的に振り返るにはもう少し時間を必要とする方もいらっしゃるのでしょう。
 日々目標や目的を持って忙しく過ごしているのなら、ゆっくり振り返って自分史を書こうという気持ちにはなりにくいのかなと納得できる部分も確かにあるのです。
 私のお客様は、現役を退いて久しい年齢の方が殆どであり、他の会の参加者もやはりある程度の年齢の方とお見受けします。やはりある程度の年齢にならないとゆっくり取り組む時間は取れないのかと考えてしまいます。
 自分史活用推進協議会が提唱するように、年齢を問わず誰もが気軽に自分史を作成して、単なる記録にとどまらずに、様々な用途に活用して社会生活に生かしていけるような雰囲気になれば良いのでしょうが、どうすれば良いものかとなるとさっぱり見当がつきません。
 自分史を自己紹介のために名刺代わりに持ち歩くのか、身分照会のために持ち歩くのか、果たしてそんな時代が来るのでしょうか。

 考えようによっては、自分の人生経歴を記した自分史を気軽に他人と交換できるようになったなら、表面に現れていない深層の人間性を推し量ることができて、仕事、趣味、地域貢献、社会貢献の場面で生かしていけそうな気がしないでもありませんが、もう少し先になるのでしょうか。
 自分史をそのように生かして活用できる社会的雰囲気になったなら、私自身でも名刺代わりに早急に自分史作りを始めることでしょう。
 もっとも、そのような時代が来た頃には、私自身が既に普通に自分の人生を振り返って、一日の多くの時間を費やして自分史作りに没頭できる年齢になっているのかもしれません。