映画と自分史

以前このブログで、自分史を書くための想起法として、昔聞いていた音楽がとても有効であるといったお話をしました。またカラオケなどで歌うことで、自分だけではなく家族や友人と共有することが出来るといったお話もしました。音楽同様、その時代を象徴するものとして映画も大きく自分史に影響します。

個人的なお話をしますが、私は高校1年~3年までとても映画が好きで、時間があればいつも映画館に足を運んでいました。私は1965年生まれですから高校時代に観ていた映画は1980年~1983年ごろに封切られたものです。この年の映画をネットなどで調べてみると、洋画では『エレファントマン』『ET』『地獄の黙示録』『インディージョーンズ』など、邦画では『影武者』『セーラー服と機関銃』『南極物語』など、多くの人たちが観たり、話題になった作品が多く、これらの映画タイトルを見ると映画の内容ではなくその背景の時代が感じられます。これは大衆娯楽である映画の社会性そのものかと思います。

もちろんここからも自分史をひも解くカギはいくつもありますが、私は先ほど書いたように映画が好きで、そのものが生活に一部だったことや、高校生だったので映画を沢山観るお金などもなく、一日に何本も上映する名画座に通ったことなど、映画そのものにまつわる思い出がそのまま自分史に繋がっています。ですので大ヒットした映画よりもむしろ当時の映画雑誌であるキネマ旬報で評判の高かった映画などに強い思い入れがあります。

そして映画には必ず印象的な音楽も挿入されているので、いわゆるサントラ版も強く印象に残ります。オリンピックが開催されると必ず演奏されるヴァンゲリスの『炎のランナー』は1980年代に公開されアカデミー作品賞を獲った同名タイトルのテーマ音楽でした。エンディングの浜辺を走るランナーのスローモーションに合わせて流れるテーマ曲が素晴らしく、そのままもう1回映画を観ました。昔の映画は今のように入れ替え制ではなく、観たければいつまででも映画館の中に入れたものでした。

近年、映画ブームといわれ、興行収入だけでなく観客動員も伸びてきています。またレンタル店などの充実、ネットレンタルなど、過去の名作を含め映画を観る媒体が数多くなり、映画に触れる機会は今までよりもずいぶんと増えて来ていると思われます。『君の名は。』を観た世代が、20年後にこの映画をきっかけに今の時代を振り返ることになるのでしょう。

私が文芸座やギンレイホールに通ったように、TSUTAYAにレンタルDVDを借りに行く世代は何が思い出になるのでしょうか。

馬場敦(一般社団法人自分史活用推進協議会監事)

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