ファシリテーション(話し合い)に自分史を取り入れる

私は行政書士として、東京都の行政書士会に所属しています。各地都道府県単位で、このように団体を作り、それぞれの会員をサポートしているのですが、その一つとして会員である行政書士の能力向上として研修を行います。当然、業務に直結するものが多いのですが、先日『未来を探る会話手法(フューチャーサーチ)』というファシリテーション(話し合い)研修会に参加して来ました。

このフューチャーサーチとは複雑性の高い状況下でも民主的な話し合いによって、望ましい未来を探究し、共創を生み出すミーティングの手法です。行政書士は法律に基づく手続きや業務を行っていますので、どちらかといえば話し合い(ファシリテーション)には馴染まないと思われていますが、実際には意見が対立している場や、様々な立場、考え方、利害が対立している場面には立ち会うことが多いのです。特に地域の中にはこのような環境が多く、それを解決する役割の人間が求められています。

行政書士は法律家とは言え、弁護士とは違い、利害関係者の間に入り、法律をかざして白黒をはっきりさせることは出来ません。法律を紛争真っ只中で持ち出すのではなく、紛争が起こりそうな場面を予測し、事前に法的な整備などにより、紛争を食い止める、「予防法務」という分野が行政書士の立ち位置になります。また法律を持ち出すということだけで、無駄な紛争も誘発してしまうということもあります。そのような時に、法律を持ち出さずに話し合いで解決する技法をADR(「裁判外紛争解決手続」といい、行政書士が今後この分野の第一人者になれるよう会においても力を入れて取り組んでいる分野です。

今回ご紹介するこの「フューチャーサーチ」の考え方が自分史の作り方、意義と大変似ていたので取り上げようと考えました。

この<未来を探る>ということは、一堂に会した様々な利害関係者が、共に希望的な未来を探り描くことで、紛争ではなく、協力関係であることを認識するという目的があります。

その目的である共通の未来を描くために参加者全員で「過去」「現在」を遡って行きます。最初に、参加者が自分たちの歴史の3つの年表(タイムライン)を共同で作成します。それは外部環境(社会・世界)の変化の過去と、自分たちの組織やローカル(組織など)の過去と、参加者個人の過去です。参加者の記憶によって描かれるため、できあがった年表は、整理されておらず、書いた人によって情報の偏りがあるが、一方で参加者の背景にある人生のドラマや重みといったものを感じさせるものになります。ここで参加者の多くの人は、1人ひとりがそれぞれの物語をもっている人間なのだというお互いの背景に対して共感し、尊厳を感じ、話し合いが進んで行きます。

このあたりの考え方は「自分史」を作る(考える)メリットと全く一致しており、過去を振り返ることが決してネガティブなことだけでないということが理解して頂けたのではないでしょうか。話し合いを円滑にするための「自分史」は様々な場面で活用されているようです。

馬場敦(一般社団法人自分史活用推進協議会監事)

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