個人情報と自分史

 

平成25年に「マイナンバー法」(正式名称:「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」)が成立しました。この法律に基づき、平成27年10月より順次皆様のお手元にマイナンバーガードの通知が来ていることと思います。このマイナンバーは2016年の1月から運用が開始され、様々なところでこの番号を求められてくるかと思います。

このマイナンバー制度に大きく関係する法律として、約10年前より施行されている法律として『個人情報保護法』があることは皆様ご存じのことかと思います。この法律は文字通り個人の情報を保護する目的で制定されましたが、必要以上の場面で使われ、悪用される場合だけでなく「個人情報だから…」という理由だけで様々なコミュニケ―ションを阻害する要因でもありました。

【自分史を作る】という過程においては、個人情報を取り扱わないということはあり得ません。もっと言えば、自分史そのものが個人情報と言えます。【自分史を作る】ということは、個人情報保護法を正しく理解することが必須です。

個人情報といえば無条件に「公開してはいけないもの、教えてはいけないもの」というような風潮の中、自分史を作るという行為そのものに大きなリスクを感じてしまうことを避けなければ、自分史はいつかなくなってしまい、個人の歴史も記録として残ることなく、戦前までの日本のように政府によって作られた歴史が残るのみになります。自分史の機能を考えた場合、これは大きな問題点です。

そこで今回は、自分史に欠かせない『個人情報保護法』を数回に分けて正しく理解していただこうかと思います。今回は『個人情報』とは何なのか、という話です。
個人情報保護法では、以下のように「個人情報」を定義しています。

(定義)
第二条 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。

<生存する>という部分から読み取れることは「生存していない個人の情報は除く」と解釈できます。この点について経済産業省のガイドラインには、以下のような解説があります。

死者に関する情報が、同時に、遺族等の生存する個人に関する情報でもある場合は、当該生存する個人に関する情報となる。すでに死亡している方の個人情報であっても、現在生存している親族などに関係する場合は、法でいうところの「個人情報」として取り扱うことが求められています。

<特定の個人を識別することができるもの>としての基本は「名前」です。「名前」があれば個人情報となります。それ以外の情報で私たちが一般に個人を特定するために使っている情報には、「住所」「電話番号」「メールアドレス」などがあります。

「他の情報と容易に照合することができるもの」とは、「名前」など明確に個人を特定できる情報と、「身長・体重」などの情報が、同一社内などにある状態をいいます。それぞれの情報が他社にある場合は、「容易に照合」とは解釈しないとされています。

以上の法の観点から言えば「個人情報だから…」といわれたら場合、まずはそもそもそれが個人情報にあたるのかどうかを検討すべきです。

個人情報は有用なデータだから悪用もされます。なのですべての個人情報を遮断できれば犯罪も少なくなるでしょう。しかし、本来本人を守るべき情報であるにも関わらず、その役割を果たさないままの存在ともなります。すべてとは言いませんが、残す重要性と残すリスクの両面からバランスのよい自分史作りを目指して欲しいと思っています。

馬場敦(一般社団法人自分史活用推進協議会理事)

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