自分史をさらに活用するために
ここからは、自分らしさを発揮して、いきいきと生きていくために、さらに自分史を活用するためのヒントをお伝えします。
自分史から生きがいや夢、目標を見つける
夢や目標、生きがいが見つからず、将来に希望が持てないという人が多いと言われています。見つけるためのヒントが自分史の中にあります。
自分が好きだったこと、得意だったこと、ほめられたこと、うれしかったことを具体的に思い出してみましょう。特に子供のころの経験が重要です。小さいころというのは、自分の能力とかお金、才能、人の目などを気にせず、自分の好奇心にしたがって、自分の好きなこと、やりたいことをやっていたはずです。成長するにしたがって、親から止められたり、対面を気にしたり、限界を感じたりして、自分のやりたいことをやらなくなってしまい、そのうちにやりたかったことを忘れてしまうのです。
ぜひ子供のころに好きだったこと、やりたかったことを思い出してみましょう。成長した今ならできることがあるはずです。そのことが、夢や目標、生きがいにつながるかもしれません。
また、会社員時代には果たせなかった関心への取り組みや、ボランティア活動に取り組むことによって、新たな人生設計や生きがい設計ができたりします。ぜひチャレンジしてみましょう。
自分の性格、行動、考え方のクセを把握する
自分のことは、よくわかっているようで、実はわかっていないものです。より自己理解を深めるために、自分史が役立ちます。
私たちは、生きていく上で、常に選択をしています。結婚するかしないかといった大きな選択から、朝目覚まし時計がなったときに起きるか起きないかといった小さな選択まで、また時間をかけて意識的にする選択から、無意識のうちにしてしまう選択まで、さまざまな選択をしているのです。
この選択の観点から、自分のやってきたことを振り返ってみましょう。どのように考えたすえに何を選択して、どう行動して、その結果何があったかを思い出してみるのです。このようにしていろいろなできごとを振り返っていくうちに、自分の考え方や行動のクセやパターンが見えてきます。修正すべきポイントもわかってきます。
たとえば、ケンカ別れしてつきあわなくなってしまった友人のことを思い出して、ケンカになった原因などを改めて考えてみると、とるにたらないことによる一時的な感情の行き違いだけだったかもしれません。その友人と仲直りしたいと思って、連絡をとってみることで、また新たな展開が生まれるかもしれません。
人生は運命と偶然と選択に左右されます。自分でコントロールできるのは基本的には選択だけです。自分の性格、行動、考え方のクセやパターンを把握しておくことで、選択の質を上げ、よりよい人生を生きていくことができるようになるのです。
自分がしてきたことの意味を考える
人は生きていく中で本当にたくさんの様々な体験をします。改めて振り返ってみると、それぞれの体験に意味があったことがわかります。特に印象に残っている体験について、紙に書き出して振り返ってみましょう。
まず体験の具体的な内容を書いてみます。次に、その体験をした当時の気持ちを思いだして書いてみてください。そして、その体験について、現在から見てどんな意味があったのかを考えてみましょう。当時思っていたのとは、また違う意味があったことに気づくはずです。そこから何を気づいたか、何を学んだかを書いてみましょう。
特に、当時は失敗や挫折だと思っていたことについて振り返ってみると、実はその失敗や挫折が後の成功につながっていたことがわかることがあります。たとえば筆者の場合、中学校受験で国立と私立の志望校に落ちてしまい、地元の公立中学校に進学しました。当時は挫折感が大きかったですが、公立に進んだことで家計に余裕が生まれ、遠距離通学の必要もなかったので、団地から一軒家に引っ越すことができ、引っ越した先の学校で、生涯の友達とも出会うことができました。その後大学も志望校に合格しました。たぶん国立や私立の中学校に進学していたら、周りの優秀な学生に圧倒されてパッとしない人物になっていたことでしょう。
このように、失敗や挫折だと思っていたことにも意味があることがわかれば、必要以上に失敗を恐れることがなくなり、多少リスクをとってでも自分のやりたいことにチャレンジして、自分らしく生きられるようになるのです。
自分を中心に人間関係マップをつくる
自分史を書き進めていくと、自分がいかに多くの人々と出会い、その人たちとの関係の中で、いろいろなことをやってきたことに改めて気がつきます。人はひとりでは生きられないのだということが実感できます。家族、友人、知人、先輩、恩師など、自分を取り巻く他者との関係を同心円的な表にまとめて書いてみましょう。そこに人と人の絆の意味が見えてきます。
自分のストーリーをつくってアピールする
自分の好きなことをやり、自分の強みを発揮して自分らしく生きていくためには、自分のことをより多くの人たちに知ってもらい、信頼感を高めていくことが重要です。そのために有効なのが、自分のストーリーをつくってアピールすることです。物語だと覚えてもらいやすいし、共感もしてもらいやすいからです。
ストーリーをつくるには、現在と過去、未来をうまくつなげることが大事です。まず、現在自分が何をやっているかをわかりやすくまとめます。次に過去のパートとして、今の仕事についたきっかけや、今までにどんなことを経験してきたか、どんな試練や逆境があり、それをどうやって乗り越えて現在までたどりついたのかを書いてみてください。次に
未来のパートとして、将来自分が実現したい夢やビジョンと、それに向かって具体的に何をしていくつもりかをあげてみましょう。現在、過去、未来をつなげて、一つのストーリーにまとめることで、説得力のあるアピール内容をつくることができます。
ほかにも自分史の中には、他の人の共感を呼べるようなエピソードがいっぱいあるはずです。借り物の話や抽象的な話ではなく、自分の体験、経験と、そこから得た気づきや知識を発信し、ありのままの自分を出していくことで、自分の人間性をアピールしていきましょう。
自分史を使ってコミュニケーションを円滑にする
会社の仕事仲間でも、仕事だけのつきあいだとなかなかコミュニケーションがうまくとれない場合が多くあります。もちろんお酒を飲みながらの飲みニュケーションもいいですが、お互いの自分史を見せ合い、それぞれがどのように生きてきたのかがわかると、格段にコミュニケーションが円滑になります。
家庭内でも、自分の両親が子供時代にどのように生きてきたのかはよく知らない場合が多いと思います。自分の自分史だけでなく、両親の自分史もつくってあげてください。つくる過程自体がいいコミュニケーションになります。お子さんがいたら、ぜひ子供に自分史を見せてあげてください。子供に何かを教えたり、さとしたりする場合にも、自分の経験や体験をもとに伝えたほうが説得力が増します。
以上見てきたように、自分史は単なる自分の歴史の記録だけでなく、自己分析や自己PR、コミュニケーションなどにも役立ちます。ぜひ自分らしく生きて幸せな人生を送るために、自分史を活用してください。自分史をつくることを通じて、皆さんが自分を再発見し、自分の可能性に改めて自信を持つことで、新たな目標にチャレンジしていく。その集積が日本を元気にしていくのだと思います。
(「自分史作成キット」解説本より一部編集)