文章をまとめるときのポイント

ここで、人に見せることを前提に、文章をどのようにまとめていけばいいか、ポイントとなることをあげてみましょう。

まずは書けるところから書いてみる

文章を書くのが苦手な方は、なかなか文章が書き始められないかもしれません。年代を追って順番に書いていく必要はないので、まずは自分が一番書きやすいトピックから書いてみましょう。人間というのは不思議なもので、書いていくうちにモチベーションが上がってくるものです。一つの事柄からまた別の事柄が思い起こされ、その事柄の結びつきから忘れていたことを思い出すことがあります。乗ってくると自分でも意外なくらいに楽しくハイペースで原稿が書けてしまうこともあります。何をやるにもあてはまりますが、まずは行動を起こすことが大切です。

自分にしか書けないことをだれにもわかるように書く

これはいい文章の基本と言われていることです。自分の思い出について書くのですから、当然自分にしか書けない内容のはずですが、社会のできごとなどを関連づけて書く場合にも、借りものの内容になってしまわないように気をつけましょう。一般的なできごとを書く場合でも、自分なりの視点や切り口を意識して書いてみることが大切です。

また、名文を書く必要はありません。小学校高学年でもすぐに理解できるようなわかりやすい文章を書きましょう。具体的に気をつけたいポイントは、文体を統一すること、難しい言葉や専門用語を使わないこと、漢字を使いすぎないこと、文章を短くすること、主語と述語がきちんと対応していること、修飾語や接続詞を使いすぎないこと、句読点を適切に使うことです。

事実をありのままに、具体的に書く

書きたい内容を事実と感情に分けて、感情よりも事実をありのままに、できるだけ具体的に書くようにしましょう。たとえば、旅行で訪れた場所の思い出について「面白かった」「楽しかった」と書くのではなく、どこがどういうふうに面白かったのか、なぜ楽しかったのかを具体的に書きましょう。「美しい風景だった」なら、読者に「なるほど、そうだったのか」と思わせるように、目で見た事実をはっきりと書きましょう。

「説明」ではなく「描写」する

思い出について、どんな内容だったかを説明するのではなく、頭の中にそのときの情景を思い浮かべて、その情景を描写するつもりで書くと、生き生きとした文章になります。特に五感を使って書くと、より臨場感やリアリティを出すことができます。「視覚」だけでなく、そのときどんな音がしたか、どんなにおいがしていたかなど「聴覚」「嗅覚」「触覚」「味覚」も意識して描写してみましょう。

自分には当たり前のことでも読者にはわからないことがある

自分のことを書くわけですから、自分では時代背景や場所などについて当たり前のこととしてわかっていることでしょう。でも自分には当たり前のことでも、読者から見るとよく知らないこと、わからないことがあるはずです。読者の立場に立って、わからないことがないかどうかを意識しましょう。自分で読み返してみただけでは気がつかない場合も多いので、第三者に読んでもらってわからないところがないかどうか聞いてみるのも有効な手段です。

単なる「自慢話」にならないように書く

つまらない自分史の代表例としてあげられるのが「自慢史」です。読み手を意識せずに書くと、ついつい鼻につく自慢話を書いてしまいます。

自慢話も読み手を意識すれば面白い話になります。読み手を意識するというのは、読み手とキャッチボールすることです。文章を一つ書くごとに、読み手に伝わる情報は何か、それに読み手がどう反応するかを想像してみましょう。その反応に答える形で次の文章を書いていくのです。その繰り返しの積み重ねによって、最後まで読み手をぐいぐい引っぱる文章になります。

書いていいこと、いけないこと

自分史は自分中心の読み物ですが、他者のことを書く場合には細心の注意を払いましょう。あなたにとってはまったく問題ないことでも、その人にとっては触れられたくないことかもしれません。それはたとえ、家族や親友であっても同じです。公言していることでも、文章にするのは別だと思う人もたくさんいます。他人のプライベートに関わることを記述するときには十分気をつけましょう。

またいわゆる「差別用語」など、読み手の中に、それを不快と思う人がいると推測される言葉は使わないようにしましょう。せっかく書くなら楽しく書かなければいけません。楽しいということは、誰にも不快な思いをさせないということでもあるのです。

推敲を重ねて文章を洗練させる

いきなり完璧な文章を書けることはほとんどありません。最初に書くときはあまり細かいことを気にせず書き進め、あとで推敲を重ねて文章を洗練させていきましょう。

書いてすぐ推敲しようとしても、気持ちの高ぶりなどで文章を客観的に見るのが難しいので、一度書いたらしばらく間をおいてから推敲するようにしましょう。

思い出記録用紙にいきなり書くのではなく、別の紙に書くか、パソコンなどで書いて推敲を重ね、納得のいく文章ができてから清書するようにしましょう。

以上は人に見せることを前提としたときのポイントなので、人に見せるつもりはない場合や、身近な人にだけ読んでもらう場合などは、これらのポイントにこだわる必要はありません。もっと自由な気持ちで書いてみるといいでしょう。

(「思い出作成キット」解説本より)