【シネマで振り返り 9】悲しみに負けない花のように ……「ひまわり」「ライフ・イズ・ビューティフル」

自分史活用アドバイザー 桑島まさき

戦争の悲劇を繰り返さないように「戦争映画」の名作を紹介したい。
まず、1970年に公開されたイタリア映画「ひまわり」。本作で主演をつとめたイタリアの大女優ソフィア・ローレンは典型的なイタリア美女でひまわりのような華やかさや逞しさを体現した女優だ。燦々と降り注ぐ夏の太陽を受けてピンと背筋を伸ばし、厳しい日差しに挑むかのように開いた逞しい花弁は、その見事な美貌と肢体でかつて世界中の映画ファンを虜にしてきた美女にふさわしい形容だとつくづく思う。

夏の風物詩ひまわり――この花が庭先に顔をだすと人々の心は海へ山へとウキウキしだし、海辺でのひと夏の恋愛を期待したりする。
冬の間、雪に埋もれたロシアの平原にも夏は訪れ、ひまわりは咲き乱れる……。
第二次世界大戦後、イタリア。戦争で行方不明になった夫(M・マストロヤンニ)を探しにロシアへ旅立ったイタリア人のジョバンナ(S・ローレン)。やっとの思いで夫を見つけたものの、そこで妻が見たものは、戦争によって引き裂かれた残酷な運命。記憶をなくした夫の横には、瀕死の彼を助けたロシア人の妻と幼い子どもがいた。悲しみで涙がとまらないジョバンナは汽車に飛び乗り、涙が渇くのをまつ。放心状態の彼女の目に移るのは、負傷兵の眠る大地の上に彼女の背丈を覆うほどの鮮やかなひまわりが、広大な大地をうめつくし、風に揺れる見事な光景だった。

ロシアの小さな村から故郷のイタリアの田舎町へ。月日が流れ、記憶を取り戻した夫がイタリアへ戻った時、2人の未来を象徴するかのように雷がなり、停電した暗闇の中で空白の時間を確かめあう。真実を今頃しったところで時間は取り戻せないことを2人は感じとる。
どんなに辛くても人は生きて、前に進まなければならない。「愛なしでもいきられる」と言い聞かせ、愛する男性を諦め新しい家族を作り強く生き抜いたジョバンナは、芯の強い女性だ。対してロシアの妻は、可憐なコスモスのような女性である。
1970年の初回公開以来、お正月などに幾度もテレビ放映されてきた本作は、主演2人の魅力もあいまってせつなくてやりきれない「泣ける映画」として世代を超えて愛されている。私の友人は、ストレスがたまった時、感情の涙をだしてスッキリするために、必ず本作を観るそうだ。

同じくイタリアの戦争映画「ライフ・イズ・ビューティフル」は、過酷な収容所生活から家族を守るために知恵とユーモアで奮闘した父親の愛情を描き、1999年の米国アカデミー賞外国語映画賞と主演男優賞に輝いた名作である。(授賞式ではソフィア・ローレンがプレゼンテーターとなり、「ロベルト!」と告げたシーンが印象的だった。)
毎日ボロ布のように殺され捨てられていく無情な世界の中で、ユダヤ系イタリア人の父、グイド(R・ベニーニ)は、愛する妻と幼い息子を守るために妙案を考え出す。小さな息子には、地獄のような収容所での生活そのものがゲームで勝ったら戦車がでると思わせ、生きる希望をもたせるのだ。父は都度、機転をきかせて問題を解決していく。おかげで息子は戦争が終わった後も、まるで遊びつかれて家に帰るがごとき無垢さである。数々の試練を知恵とユーモアできりぬけていった父の奇跡的な勝利である。

どんな逆境にあっても心がけ次第で、不幸は幸福に変えることができる。心のゆとりや豊かさは生きる知恵をうみ、精神的に追い詰められた者に平静心をもたらしてくれる。父が教えてくれた愛情たっぷりの魔法、息子は決して忘れないだろう。
かくも残酷で愚かな戦争が二度と起きないように、戦争を体験された方たちのお話を形にして、戦争を知らない世代に語り継いでいく努力が必要なのは言うまでもない。

※「ひまわり」(1970年9月日本初公開、2011年12月17日ニュープリントでリバイバル公開)
ひまわり(1970) : 作品情報 - 映画.com

※ 「ライフ・イズ・ビューティフル」(1999年4月17日公開)
ライフ・イズ・ビューティフル : 作品情報 - 映画.com

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