自分史を作ることは次世代のためになる

自分史活用アドバイザー 関 和幸

2022年をふり返ると、今年もたくさんの有名人が亡くなった。インターネットにまとめられたリストを見ると、かつての愛読書の著者をはじめ、意外な人が亡くなっており、本当に悲しい。

たとえば、西村京太郎さん(作家)。野田知佑さん(カヌーイスト)。藤子不二雄Aさん(漫画家)。出井伸之さん(実業家)。三宅一生さん(デザイナー)。アントニオ猪木さん(プロレスラー)。水木一郎さん(歌手)……。

彼らのような有名人は、たいてい自著を持っており、数々のメディアで取材を受けている。だから彼らの人となりやエピソードに後世の人が興味を持ったとき、その足跡を辿ることは比較的容易だろう。

しかし、一般の人たちはどうだろうか。私たちの周りにいる、私たちにとって大切な人は、かなり活躍していたとしても、自著を持っておらず、メディアでの取材を受けていることも少ない。つまり、あとからその人のことを知りたいと思っても、知りようがないのである。

これは後に残された者にとって、痛恨のことだと思う。たとえば、私の場合。今年、大変お世話になった矢野弾先生という矢野経済研究所の創立メンバーの方が亡くなられた。

この方は生前、大変な活躍をされていたのに自著を残されていない。田中角栄氏が建設大臣だった頃の経済白書作りの話など、お茶をご一緒した時に伺ったきりで、うろ覚えになってしまっている。

もし、先生が自分史を残してくれていれば。いつでも先生のエピソードや人となりに触れ、後進の私たちを励ましてくれただろう。

さらに今年は、私の従叔父(いとこおじ)と私の叔母も亡くなった。明朗快活を絵に描いたような従叔父や、親切かつユニークな人柄だった叔母のエピソードは、もう直接聞くことができない。絶対に面白い自分史になったことは間違いないのに。

多くの人に、そんな後悔をしてほしくないからこそ、私は自分史制作に取り組んでいる。裏返せば、自分史を作ることは本人だけでなく、その周りの人をも幸せにすることだと確信しているのだ。来年もそんな想いを胸に、自分史制作に邁進していきたいと思う。