自分史を楽しむ方法と手順

一般社団法人自分史活用推進協議会代表理事 河野初江

自分史には書くだけではない楽しみ方があります。自分史は楽しみながらつくりましょう。

1,全身でつくろう

 自分史をつくる楽しみは、頭から足の先まで全身をつかって行うところにあります。まず「頭」。記憶を呼び起こしたり、誰に読んでもらおうかと考えたり、どんな自分史にしようかとプランを練ったりするところで脳がフル活動をします。次に「心」。昔のことを思い起こすことで気持ちも若返ります。わくわくするような青春の日々や、辛く悲しい出来事から立ち直ったときのことを思い出すことで自信や誇りがよみがえり、心がときめきます。懐かしい場所に出向いたり、図書館で資料を探したりと「足」も使いましょう。写真を探したり、原稿を書いたりと「手」も動かします。身体を動かして自分史をつくっているうちに、いろいろなことに興味が湧いてきて、毎日がきっと楽しく張りのあるものになります。

2,粗年表をつくろう

手始めに簡単な年表をつくりましょう。思い出せる範囲の簡単なものでいいのです。いざ年表にしようとすると、しっかり覚えている時期と、何も書くことが浮かばない時期があることに気がつきます。何も書くことが浮かばない空白の時期を見つめて、自分の人生は書くべきことがない人生だったのか、と悩む必要はありません。思い出せない時期こそ懸命に生きた時期であったりするからです。空白のその時期、社会ではどんな出来事があったでしょうか。流行っていた音楽や、友人や恋人と見た映画、ベストセラーとなった本などから、当時の自分を思い出してみましょう。食卓に年表を広げて思い出そうとしていたら、家族が寄ってきて思い出話に夢中になった、という話もよく聞きます。

3,素材を探そう

手近にある素材も記憶を呼び覚まします。アルバムや日記、賞状や文集、手帳にたくさんの思い出がつまっています。海外旅行の記憶を呼び覚ますにはパスポートが役立ちます。車や家など大きな買い物をしたときのことは、通帳や家計簿からも伺い知ることができます。手縫いの洋服や編み物から親の愛情を感じたり、残された写真からどんな人と付き合い、どんなことに夢中になっていたのかを思い出せたりするものです。

4,思い出の場所に行ってみよう

小学校や中学校など通っていた学校や、新婚時代を過ごした町を訪ねてみるのもいいでしょう。幼い頃、高くそびえていると思った塀が意外に低かったと気づいたり、寄り道をして遊んだ裏山が変わらぬ姿であったりと、当時の自分に戻ることができます。

5,懐かしい人に会いに行こう

人生は出会いの連続です。どんな人と出会い、その出会いによって自分がどう変わってきたか。そんな目で人生を見つめ直すのもいいものです。若い頃にはわからなかった出会いの意味が、時を経て得難いものであったと気づくこともあります。家族や親戚、友人、学校の先生、部活の先輩や後輩、会社の上司や同僚、仕事先で知りあった人や趣味仲間、ご近所の方と再会することで当時の様子が蘇ってきます。また、あの日あの時どんな気持ちでいたのか、見えてきます。

6,書きたいところから書いてみよう

 自分だけが知っている出来事を誰にでもわかるように書きましょう。失敗や挫折も今にして思えば意味のある体験であったと思えることがあるものです。良かったことはもちろん、うまくいかなかったことも振り返り、そこから得られたものを書くことから共感が生まれます。

パートナーや子供、長年の友人など、身近で信頼できる人に原稿を読んでもらい、必要なところは手直しをしましょう。そこまらまた新たな発見があるものです。