戸籍へのフリガナ記載と自分史

一般社団法人自分史活用推進協議会理事 菖蒲 亨

戸籍法が改正され、先日、令和7年(2025年)5月26日から、戸籍に氏名のフリガナが記載されることになりました。これまで戸籍には氏名のフリガナは記載されておらず、出生届などに記載された氏名の読み方の情報を各市区町村が保有し、各種事務処理に利用してきましたが、今回、戸籍にフリガナが追加され、特定の事実などを行政が公に証明する「公証」の対象となり、様々な行政手続きの際に、フリガナで本人確認ができるようになったとのことです。

同日以降、本籍地の市区町村から、戸籍に記載される予定のフリガナの通知が届くそうです。実際の読み仮名に合っていればそのままにしていいですが、間違いがあれば届け出る必要があるそうです。私がへええと思ったのは、現在居住しているところ、つまり住民票のある市区町村からではなく、本籍地の市区町村から、戸籍に記載される予定のフリガナの通知が届くというところです。いまさらですが、戸籍は本籍地にあり、住民票の置かれた場所にはないというところでした。戸籍謄本をとる際の不便さから私はすでに本籍地を移してしまっていますが、生まれ故郷に親類縁者の方がいらっしゃる方などは、生まれ故郷に本籍地を残している方も多いのではないでしょうか。生まれ故郷、本籍地に想いをはせる、そんな機会になるかもしれません。

自分史で、自分の名字の出どころを知りたいという時、新編姓氏家系辞書を調べたりはしてきたと思うのですが、たとえば新編姓氏家系辞書と神奈川県姓氏家系大辞典とを比較すると、同じ家系図で菖蒲氏のフリガナにアヤメ氏とショウブ氏が登場するのです。家系研究においては文字が優先されたということなのかもしれません。アヤメ氏であろうがショウブ氏であろうが、菖蒲氏は菖蒲氏として扱われていると私は感じました。家系を考えるとき、音が優先されるということはなかったのでしょうか。たとえば、菖蒲氏で前出の例であれば、アヤメ氏とショウブ氏は同じ家系の出として扱われているように思われます。一方でアヤメ氏という呼称で言うのであれば、アヤメ氏は綾目氏や文目氏と同系列ではあるまいかと思えたりもするわけです。

今回の戸籍へのフリガナ記載が、個人のアイデンティティや文化的な歴史を深く理解する新たな手助けとなり、自分史を調べる際、読み仮名を中心にした豊かな人生のストーリーをも紡ぐこと、自分史の発展の好機となることを願ってやみません。