個々の体験談を通じて、世界を考える―――過去に目を向けることの本質について
戦後80年、そして自分史誕生50年を迎える2025年8月に向けて、自分史活用推進協議会では記念企画として、2年前から出版計画を進めている。
題して、『“一枚の自分史”で語る今に残る戦争体験』。これは全国各地の自分史活用アドバイザーが中心となり、戦争体験にまつわる様々なエピソードを1枚の写真とともに取りまとめたものだ。寄せられた原稿は延べ60作品に及んでいる。
この企画の主軸となるコンセプトは、「戦争は過去の出来事ではなく、現在進行形である」という警鐘である。戦後80年を迎えるなか、戦争体験を語られる人は少なくなっている。しかし、世界に目を向ければ戦争の爆音は今なお私たちの耳に大きく響き渡っている。
問題は、それを我がこととしてとらえられるか否か。
たしかに歴史は繰り返され、人類は同じ過ちを何度も繰り返してきた。しかし、科学技術が発達した現代では、ひとつの過ちが人類存亡の危機さえ脅かしてしまう。もはや繰り返しようのない次元まで人類の戦争技術は達しているのである。にもかかわらず、世界の各地で争いが絶えないのはなぜか。
今からちょうど40年前、1985年の5月8日。ドイツ敗戦の日から40年目を迎えたその日、ドイツ終戦40周年記念演説の席で当時の大統領ヴァイツゼッカーが語った次の一言はあまりにも有名である。
「過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目となる」
この一言は、歴史を学ぶこと、過去に目を向けることの本質を突いていると思う。歴史には世界史や人類史など大きな視点でとらえる見方もあれば、逆に個人史や自分史など最小単位でとらえる方法もある。
世界の歴史を学ぶことは世界の未来を考える道しるべとなり、自分の歴史を振り返ることは自分の未来を考える指標となり得る。すなわち、私たちがそれぞれの人生を振り返り、言葉に残す過程を経ることが、今の自分の在り方や、これからの道筋を照らすことにつながるのである。
戦後80年、自分史誕生50年の節目に、個々の戦争体験を綴った今回の出版企画は、個人の視点で切り取った世界全体の一部分である。そう考えれば、個人史と世界史は切り離せるものではなく、密接に関わり合った総体だということができる。
個々の体験談を通じて、世界を考える。そのきっかけとして、この出版企画が意義深いものとなると信じている。
なお、こちらの出版企画は現在クラウドファンディングとして広く協力を呼び掛けている。
8月7日には出版披露会も企画されている。
ぜひこちらをご覧いただき、ご協力を検討していただければ幸いである。
戦後80年の今年、8月15日にむけて、『今に残る戦争体験』という本を形にしたい
https://camp-fire.jp/projects/834010/view