ときめく自分史づくりー読まれる自分史のポイント

一般社団法人自分史活用推進協議会理事 河野初江

つくるからには読んでもらいたいものです。読まれる自分史となるためのポイントをご紹介します。

1  今にして思えば、と考えてみる

自分のことは自分が誰よりもよく知っている、そんな気持ちで自分史を書いてしまうと、本人だけでなく読み手にも発見と驚きの少ない退屈な自分史になりがちです。また、自分の体験を忠実に再現しようとするあまり、データや記録を追うだけになり、肝心の自分の影が薄くなってしまう、ということも起こりがちです。よく知っている出来事であればあるほど、今いちど当時に立ち戻って、「その時の周囲の情景はどうであったか」「その時どんな気持ちだったのか」ということが、読み手にもわかるように書くとよいでしょう。また、ひとわたり当時の様子を再現したあとで、「今にして思えば」と振り返り、今の思いをひとこと添えるだけでも原稿は生きてきます。

2 点と点をつなげてみる

一つひとつの出来事を、ただ追って書いていくだけでは、どんな人生であったかはわかりません。一つの出来事は、一つの点でしかありません。けれどもそれが起きたことで何が変わったのか、その結果どうなったのかと考えながら出来事を結んでいくと、そこから浮かんでくる情景があります。こうして点と点をつなげたなかで描かれる情景こそ、その人ならではの「人生」であり、「意味」であると言っていいでしょう。読み手はそこに魅力を感じ、惹きつけられるのです。

3 自分だけ史にしない

この世にポツンとただ一人で存在する人はいません。けれども時々、自分史ではそういうことが起こります。自分の人生を書くことに熱中するあまり、世の中のことを忘れ、書き急いでしまうのです。その頃、どんな部屋に住み、どんな本を読み、世の中ではどんな音楽が流行っていたでしょうか。テレビではどんな番組が話題になり、世間を騒がせたニュースにはどんなことがあったでしょう。そんな時代の中で何を思っていたのか、そこまで描いて初めて人は情景が浮かび、どんな時代を生きようとしていたのかがわかり、共感するものです。

4 自慢だけ史にしない

頑張ってきた自分のことを伝えたい、これは人間の本能であり、それにブレーキをかける必要はありません。けれども何一つ失敗のない、いいことずくめの人生、それもまた本当だとは思えません。人生にはいいこともあれば、辛いこともあるものです。むしろ、その辛いことからどのように脱し、克服し、今に至ったのか、それを聞くとき初めて読み手の中に、頑張って生きてきた書き手への敬愛の念が芽生えてきます。

5 どん底体験が物語を生む

人にはそれぞれ、どん底体験があるものです。そのどん底体験と向き合うことを、たいていの人は嫌がり、避けて通ります。記憶から消し去って、無かったことにしている人もいるでしょう。けれどもその挫折や失敗体験を、そのまま持ち続けることが必ずしも良いとは限りません。人生のどこか、振り返ってみようと思える時期が来たら、一度はそのどん底体験と向き合い、そこから得たものについて考えてみましょう。過去は変えられませんが、過去に対する見方は変えることができます。時を経てみれば、失敗体験や挫折体験が、自分を鍛え、人生をより豊かなものにしてくれたと気づいたりするものです。そして、その経験談に助けられ、励まされる人もまた居るのです。

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