ときめきの自分史―エンディングノートと自分史の違い

一般社団法人自分史活用推進協議会理事 河野初江

エンディングノートは、自分に「もしも」のことがあった時のためにつくられるもので、終活とともに普及してきました。エンディングノートに自分の人生の記録を書き記す人も多いことから、エンディングノートもまた自分史の一形態であると言っていいでしょう。ただエンディングノートの場合、自分史が自分の個性を発揮し自由なスタイルと考え方でつくってよいのと違い、エンディングノートならではの役割があり、それを踏まえた記述が求められます。

エンディングノートも自分史の一形態、書くことで自分に関する整理が進む

書く内容が決まっているわけではありませんが、多くの場合、自分の病歴や入院歴、終末期医療の意思表示、介護の意向、財産(貯蓄、保険、不動産、年金、債務、その他資産)と遺産の処理方法、葬儀・埋葬・供養に関する希望、万が一の時に連絡をとるべき親族の情報、友人・知人の情報、残していく家族や身近な人々へのメッセージなどが書かれていると受け取る側にとって便利であるとされています。自分のことだけでなく、大切なペットの世話ができなくなる場合も想定して、ペットに関する情報も記入する人が増えています。

エンディングノートには法的拘束力はありません。けれども、家族や残された人に対して一定の心理的拘束力はあります。特に終末期の医療に対する考え方、葬儀と埋葬に関する希望、写真の整理、遺品の処分など、周囲の人が対処に迷うことが書いてあると、いたずらなもめごとを回避することに役立ちます。

エンディングノートを書いたらエンディングノートを書いたことと、それがどこに置いているかということを共有すべき相手に伝えることも大事です。

最近ではデジタル遺品の処理に残された人が悩まされることが多くなっています。有料会員サービスや定期購読サービス、定額制の動画配信サービスなどを利用している場合、契約を停止する必要があります。携帯やパソコン、ネットショッピングなどよく利用するサイト、FacebookやLINEといったSNSの利用を停止したり退会するために必要な情報を書いておきましょう。

エンディングノートはこのように自分にもしものことがあったときの「誰かのために」つくるものですが、終末期に関する自分の要望を整理することを通して自分と向き合い、新たな自分の発見にもつながります。自分の歩みや夢や目標、身近な人への感謝の気持ちも添えれば、それはまたかけがえのない自分史ともなります。