自分史を味わうための読書(5) 自分史を俯瞰するための補助線
一般社団法人自分史活用推進協議会理事 河出岩夫
初めて自分史に取り組もうとするとき、人生という膨大な情報量を前に圧倒されたり、途方に暮れることがあるかもしれない。
もしどこからどう手を付けたらよいか分からないままにペンを持って書き始めるとすれば、それは航海図のないまま大海原に漕ぎ出す行為に似ている。普段から文章を書きなれている人なら、そうしたやり方でもそれなりに形に収めることはできるかもしれない。しかし、そうでない人の場合は途中で書き進めることが難しくなる可能性が高いと思える。
自分史で挫折しないために重要なことのひとつは、事前の準備である。年表や家系図、人間関係図を事前に書いておくだけで、人間関係と時系列の全体的な構成が見えてくる。これは主に客観的な事実関係を記述する際の重要な資料になる。
しかし、自分史の醍醐味は事実関係の記録だけではない。この時代を生きた自分自身が、何をどのように感じ、どう変容していったのか、主観的で感情的な内面の記録もまた自分史をより個性的なものに導いてくれる。では、心の動きを記録するための下準備はどうすればよいだろう。ひとつの例としては幸福度を縦軸に、時系列を横軸に表すライフチャートの作成がポピュラーだろう。人生の良い時、悪い時、その時に何があり、どう感じたのか、それらを視覚化できるライフチャートは、自分史作成で重宝される図解法のひとつだ。
人生という途方もない情報の中から、何をどうとらえながら記述していくのか。もっといえば、この自分史からいえることはいったい何であるのか。ある意味で自分史に取り組むことは、過去を振り返り、現時点までの半生を総括しながら、未来への展望を新たにすることと言っていい。
しかし、人生の総括というのはなかなかに難しい。これまでの人生をどうとらえるかによって、答えはさまざまであるし、これが正解というものもないからだ。そこで取り入れてみたいのが図解という枠組みを使ってみることだ。
先にあげたライフチャートもそのひとつ。文章だけではとらえづらい人生という膨大な素材に、いくつかの切り口を与えてくれるだろう。
そこで今回取り上げたい一冊は『人生は図で考える』(著平井孝志)である。本著では人生を図でとらえる思考法を21種類ほど解説している。著者は長年のコンサルタント業の経験から事業や経営を図式化してきたことから、これを人生に置き換えてみても応用が利くことに気がついた。
個別の図解法についてはここでは述べないが、以下の構成でまとめられている。
- 図解で後半生をとらえ直す
- 図解で自己実現する
- 図解でより良い選択を導く
- 図解で苦難を克服する
- 図解で幸せを考える
自分史に取り組む理由によって、必要とする図解法は変わってくるかもしれないが、これらの補助線を加えることによって、人生を俯瞰する視点が身につくと思う。