自分史づくりの費用について考える

一般社団法人自分史活用推進協議会理事 河出岩夫

自分史をつくるのにいったい費用はどのぐらいかかるのだろう。
そんな疑問を持つ方は多いと思います。
ここでいう「つくる」とは、形に残すことで、主に紙媒体を前提に話を進めます。
先に結論から言ってしまうと、自分史づくりの費用は「数百円から数百万円まで」と実に幅が広いといえます。なぜなら、ノートとペンがあれば1冊だけの自分史を書き残すことはできるし、自費出版で本格的に制作すれば数百万円かかることも珍しくないからです。
書き手の立場で考えてみると、できるだけ費用はかけたくないという心理もあれば、一生に一度のことだから多少お金がかかってもいいものを残したいという心理もあります。
そうしたことを踏まえつつ、ここでは自分史づくりに関わるコストの内訳をひも解きながら、どのようなメリットとデメリットがあるのか考えていきたいと思います。

まず、自分史づくりの費用の内訳ですが、大きく以下の項目に分けてみます。

  1. 執筆に関わる費用(ライター費用。自分で書く場合はかからない)
  2. 編集・校正(本全体の構成についてアドバイスしたり、文章のチェックを行う)
  3. デザインレイアウト(文章や写真を本の形にする、カバー等のデザイン)
  4. 印刷製本(文字通り、印刷製本代)
  5. 管理(スケジュール管理や品質管理など)
  6. その他雑費(交通費や通信費、会議費、送料など)

費用を安く抑えるためには、原稿を自分で書き上げることがひとつのアドバンテージになります。ただし、途中で書けなくなるなどスランプがあると作業が停止します。ライターに発注すると、スケジュールに向けて計画的に進められるメリットが高くなります。

次に編集校正について。誤字脱字だけでなく、書かれた原稿が著作権や個人情報の問題、名誉棄損や差別的表現に触れていないか、いくつもの専門知識が必要になるのも事実です。編集や校正者を立てると費用は高くなりますが、本になった後のトラブルが未然に防げるメリットがあります。

レイアウト・デザインについては、ワープロソフトやデザインソフトが使える方、印刷知識がある方は自力で行えば費用はかかりません。一方、レイアウトデザインに費用をかけることで、読みやすい文字のバランスやデザイン性が生まれます。印刷会社との交渉もスムーズになります。

印刷製本代については、たとえば自宅のプリンターでプリントして、ホチキスで留めたり、市販の製本テープなどを使えば、お手製の本づくりは可能になります。この場合の費用はプリント用紙やインク代などで済み、とてもリーズナブルになります。
ある程度の印刷知識がある方であれば、インターネットで印刷製本サービスを行っているサイトへ直接発注をかけるのもコストを抑える有効な方法です。一方、プロに任せる場合はコストがかかる分、書籍として高い完成度のものに仕上げることができます。

管理料はスケジュール管理や品質管理など、全体の管理を行うための人的費用です。担当編集者が兼務する場合もあります。
そして、その他の費用として、様々な雑費があります。

結論として、自力で行える範囲が広ければ広いほど、コストは安くなる可能性が高くなります。一方、第三者の視点のないままに書き上げられた原稿がそのまま印刷製本された場合、さまざまなリスクが伴うことも知識として押さえておく必要があります。

コストによるメリットとデメリットを踏まえながら、ご自身に合った自分史づくりに取り組んでいただければと思います。