エッセイ式自分史の作り方

今私が自分史活用アドバイザーとして携わっている案件で、亡くなったお父様の残した断片的エッセイのような文章をまとめて、お父様の生きた証として1冊の本にして親族の方々に配りたいというお客様がいらっしゃいます。

これが『自分史』と言えるかどうかは別として、自分史を作る中での大きな効果の一つは「家族間コミュニケーション」であり、家族に対し新たな発見や想いを深めることのできる大変価値のある方法だと思います。

自分史を残したいと思ってみても、時系列にまとめたり、考え方や行動等に一貫性を持たせたりとやはりそれなりに全体の構成などに気を取られ、なかなかスムーズに進まないものです。本当に言いたいことや、今感じていることなどを後回しにしてかたちだけの自分史になり愛着が持てないなんてことにもなりかねません。せっかくお金や時間を使って自分史を作っても、全部を自分でやろうとするとこんな問題が出てきます。

そこで、今回ご紹介する『エッセイ式自分史』とは、まとめや体裁を整える作業はあとに残る家族に任せてしまい、自分がすべきことは「今、自分が感じていること」や「(時系列にとらわれず)自分に影響があったこと」など、まさにエッセイ風に気が付くままメモ用紙に書き綴り、どこか一か所に集めておくという方法です。自分が好きなことや興味があることは一度書いたとしても書きたければ何度でも書き綴ることが実はこの方法の大きなポイントです。とにかくたくさん書いて残すこと(重複を気にしない!)でご本人の生き方の傾向が事前と出て来るものなのです。

この方法でもう一つ大切なポイントは、このエッセイメモをまとめたいという考えを家族に伝えること。うまく伝えられなければこの希望もエッセイメモに残しておきましょう。
あとはひたすらご自分の気持ちからくる書きたいことを何のテーマも決めずに書いていくことが大切になります。

何年後かにご本人が亡くなったあと、そのエッセイメモが家族の方々の目に入るわけですが、ご家族は故人の残したメモを読み他の家族と一緒になぜ故人がこのメモを残したのか、どんなことに興味があったのかなど、故人について想いを巡らせます。

我々のような自分史活用アドバイザーは、このあとの本にする作業のお手伝いをしていきます。アドバイスはしていきますが、最終的にご決断されるのはご家族の方になると思います。それまでの過程が家族の絆を強化するだけでなくまた、オーバーな言い方かもしれませんが、故人が家族の心の中で生きていくということもこの方法の目的とするところです。

またエッセイメモを家族にわかりやすく書くということも、あまりに神経質になりすぎない方がいいでしょう。たとえわかり難くても、『謎解き』の要素もあり、本人による修正は意外と難しいので、これは割り切って考え、やはりこのあたりは家族を信頼して任せましょう。

改めて言いますが、『エッセイ式自分史教室』は何でも自分自身でやらず、没後まとめ作業は後に残る家族にやっていただきます。時差のある分業自分史とでも言ったらいいでしょうか。ぜひお試しください。

馬場敦(一般社団法人自分史活用推進協議会理事)