未来と自分史

生命保険に入る際、ライフプランニングシートというものを作成した方が多いかと思います。このライフプランニングとはこれからの将来に向けて必要なお金を計算し、不足する部分や、病気など不測の事態に備え、どの段階で保険を活用するかといった『お金』という側面から見た将来設計です。多くの場合、これらは保険会社の営業ツールとして活用されていますが、このようなプランを作りこれからの人生を俯瞰することで将来の漠然とした不安を解消する効果があります。

この将来に対するプランニングと過去を振り返る自分史とは全く別のものとして考えがちですが、実はともに大きな関連性を持つものなのです。

自分史という大きな括りの中には『未来自分史』というものがあります。我々自分史活用推進協議会の仲間にもこの未来自分史に取り組んでいるアドバイザーが多くいます。特にコーチングという人材開発の技法を使い、相手の自己実現や目標達成の支援を行うカウンセラーは、未来自分史を積極的に取り組んでいます。彼らと話をすると未来の自分は過去の自分と大きく関わっていると言います。過去に築き上げられた経験や価値観が未来を大きく左右するそうです。これは過去を単に振り返るというよりも、しっかりと受け止めた上で分析をしてこれからの未来を丁寧に設計していくというものであり、もう戻ることの出来ない過去を後悔するのではなく、自分を創ってくれた大きな財産であると肯定することが未来の目標に向かう第一歩であると言えます。

過去を振り返り、今まで全く出来なかったことを人から言われたというだけで今から突然出来るわけもなく、それを未来に向かって自分の生活に組み込むことは現実的ではありません。まさに『絵にかいた餅』になってしまいます。

お金のライフプランニングも全く同様です。今ある財産や家族は過去の自分が築き上げてきたものです。自分なりにその時々を考えながらお金を使ってきたのだと思います。このお金の使い方というのも大きな価値観であり、それは正解のないものです。未来の予想は初めて会った保険会社のライフプランナーでも出来ますが過去の生活パターンやお金の使い方やお金に対する考え方は本人しかわかりません。

今を見つめ、すぐに未来に向かうのではなく、過去を振り返る……

ちょっと古いですが渡辺真知子の『迷い道』という歌に、「現在、過去、未来~」という印象的なフレーズがありますが一見この無秩序な順番は大変意味のある歌詞であり、自分史を組み立てる上で大きな枠組みとなるのです。

馬場敦(一般社団法人自分史活用推進協議会理事)