地域史と自分史

戦争体験と同様、後世に残すために必要な自分史として、地域史というものがあります。同じ地域に何代にも渡り暮らしてきた方々が自分史の中に地域史を取り入れることで、自分が生まれ育ってきた町がどのような歴史を刻んできたのかということを残すことができます。歴史というと何か縁遠く感じますが、祖父の自分史の中に登場する小学校が今自分の通っているところだったりすると、自分も地域の歴史に参加している実感が出てきます。いつも何気なく通り過ぎていたお寺や神社の歴史を知ることで、自分たちの先祖が祭りや様々な行事によって代々受け継いできたことを理解し、また次の世代へそれをいい形で引き継いでいくことになるでしょう。

地方自治のためには地域の活性化が必要であることはわかっているのですが、そのためには自分の住む地域に対し愛着を持てなければ活性化どころではありません。自分はこの地域に育てられているという意識をはぐくむためには自分史の活用が有効になります。

地域で起きた災害も、記録を残すことで次の世代への警告となることもあります。3年前の東日本大震災は悲しい出来事ではありましたが、残された人々がもうこのような悲劇を繰り返したくないという思いから、様々な方々が個人レベルで様々な記録を残しています。

三陸海岸各地に約200基の津波記念碑があるそうですが、ここにある記念碑には『ここより下には家を建てるな』という言葉が刻まれているそうです。明治から昭和初期に災害を経験した当時の人々の、現代の私たちに向けての想いに胸が打たれます。このように言葉を残すという手段によって私たちは祖先に守られ、そしてまだ見ぬ子孫を間接的に守っていくことでしょう。これから自分史を書こうと思っている方々は、自分史にはこのような効用や使命があるということも覚えておいていただけたらと思います。

馬場敦(一般社団法人自分史活用推進協議会理事)