自分史と著作権

自分史を本にして残す場合、著作権について考えることは重要です。現代はインターネットなど至るところで文章や写真など利用しようと思えば気軽にできてしまう環境です。悪意がなくても「知らない」ということで利用してしまうことがほとんどだと思いますので、今回は自分史を書くときに最低限知っておかなくてはならない著作権について解説したいと思います。著作権は音楽やソフトウェアなど多岐にわたりますが、ここでは自分史に関する部分を中心に見て行きます。

「著作権」とは自分のつくった音楽や絵画、文章などを勝手に利用されないための権利です。販売目的ではなく個人的につくったものにも著作権は発生します。しかも、著作権は著作物をつくった時点で自動的に発生し、特に届出などは必要としません。

よく「Copyright」とか?といったマークを見かけますが、このマークがあってもなくても法的には著作権は発生します。ということは、皆さんが書いた自分史は登録などをしなくても書いた時点で保護され、特に何か意思表示をしなくても誰からも利用をされることのない権利を持つのです。このあたりは登録を必要とする「特許権」や「商標権」との大きな違いです。

この権利を侵害された場合、民事上損害賠償請求ができるだけでなく、刑法上の罰則もあります。個人の場合(私的使用のための複製を行った者、著作権等の侵害とみなされる行為を行った者を除く)、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金に、法人等の罰則は、罰金刑3億円以下とかなり重いので注意が必要です。

著作権は財産権ですので、不動産や預金のように相続の対象となります。もし自分の親が自分史を遺して亡くなった場合、その著作権は相続されます。親の自分史を勝手に利用された場合、相続人である子供が損害賠償請求を起こすこともできます。

この著作権は永遠に続くわけではなく、著作者の死後50年間までが保護の対象となります。この期間を経過すれば、だれでも自由に利用することができます。

著作者の権利を守るために、著作権法で厳格に保護されていますが、例外もあります。例えば、私的使用であれば著作物を許可なく使用できます。家庭内など個人的な限られた範囲内で使用する目的で、使用する本人がコピーする場合は、著作者から許諾を得なくてもよい、という規定があります。

自分史に関しては、本として作成すれば自分や家族以外にも見せる可能性が出てきて、私的使用とは言えない場合がありますので、注意が必要です。また、目的に関しても、私的使用とは言い切れないところもありますので、例外と考えないほうがいいかと思います。

もし、どうしても他人の著作物を自分史の中に取り入れたい場合は、「引用」という形で利用することができます。法律上は「引用の目的上正当な範囲内」と限定されています。自分史を作成するにあたり、引用する著作物の必要性が問われるということです。また引用であることを明確にするためカギカッコなどで区分する必要があります。

なお、引用の際の出所の明示の仕方ですが、引用部分を明確にした上で、その後に誰のどの著作物であるかを表示するなど、少なくとも引用された著作物の題名や著作者名が明らかにわかるような表示が必要です。

著作権に関しては今回ご紹介したものはほんの一部です。他にもたくさんの例外もあり、専門家でもかなり意見が分かれることがあります。自分史はあくまでも自分自身を映すものです。そういった自分史特有の目的からいっても、基本は人の著作物は利用しないといった姿勢で臨むことが必要だと思います。自分史は自分の言葉で語ることが一番の価値なのですから。

馬場敦(一般社団法人自分史活用推進協議会理事)