【シネマで振り返り 66】自然と闘い、究極の選択の末に生還した男の物語 …… 「127時間」

自分史活用アドバイザー 桑島まさき

2011年6月日本公開されたハリウッド映画「127時間」の試写を鑑賞したのは、同年の米国アカデミー賞授賞式(2/28)の翌日の3/1だった。人気女優のアン・ハサウェイと一緒に授賞式の司会をしていたハリウッドの若手実力派、当時人気急上昇中だったジェームズ・フランコ主演作で作品賞候補にもなっていたので観にいったのだった。その少し前にニュージーランドで大地震がおき日本人観光客が被災していただけに自然の脅威を改めて実感したが、この時点で、まさか数日後に「東日本大震災」が起こるとは思いもしなかった……。

「127時間」は、実話である。死ぬ程こわい思いや臨死体験をした人は少なくないだろうが、米国人アーロン・ラルストンは大自然の驚異に遭遇。慣れ親しんできた無人の荒野で事故に遭い、生命の灯が消えるぎりぎりのところで、諦めずもう一度人生を生き直すために究極の決断をし生還した。
2003年4月、週末は渓谷散策をするのがライフスタイルのアウトドア派のアーロン(ジェームズ・フランコ)はいつものように金曜日夜、仕事を終えて身支度をして車を走らせる。その日はユタ州のブルー・ジョン・キャニオンに行くつもりだった。車中で夜があけるのを待ち、土曜日朝、車からマウンテンバイクを取り出して目的地へ向かう。幾度も来ているので自分の庭みたいな気楽さだ。広大な大陸の中のほんの一部の渓谷。それでも雄大だ。

米国には自然の作り上げた芸術的な荒野が無数にある。監督のダニー・ボイルは自然と戯れる陽気な青年の生命の煌めきをスタイリッシュな映像で演出する。すれ違う人は一日数人しかいない。大自然の中で独りきりの喜び、解放感、高揚感。偶然、すれ違った女性2人組のクライマーと岩と岩の狭い隙間から真下にある泉(こんな場所があるとは!)に真っ逆さまにダイブして遊んだり、「自分の遊び場」で自由を満喫したり。
しかし、事故は唐突に訪れた。軽快に岩から岩へと渡っていたところ落石と共に谷底へ落ち、なんと右腕を落石に挟まれ動けなくなってしまう。普通に生活しているとあり得ないシチュエーションだが大自然の中では起こりうるのだ。「大自然の穴」に落ちたアーロンの居場所が、巧みなカメラワークによって知らされる。訪れる人がいてもまず気づかないだろう場所に落ちた彼の助けを求める声は誰の耳にも届かない。
持ち上げたり、巨大岩をナイフで削ったり、様々な工夫を試みるが、無駄に動くと体力を消耗するばかり。リュックには当座の水や食料、ビデオなどがある。最初は笑っていたが、次第に事の深刻さを悟る。山岳救助のボランティアをしているのである程度の知識はある。人が困難に耐久できる時間は127時間だ。果たして、その時間内にアーロンは救出されるのか? 次第に体力は衰え意識は朦朧とするのだった……。

自然との闘いがドキュメントさながらに描かれる。そして、究極の選択をして自力で脱出(未見の方のために伏せさせていただきます)する決断をするそのシーンはリアリティーありすぎ!
「岩が自分を待っていた」のか、行き先も告げず、人に関しては深くかかわらない主義できたこれまでの自分。自由奔放さのツケがこの事故を呼んだと反省し、猛烈に生きたい願望がおき、奇跡の生還を果たしたアーロンの体験は全米を驚かせ、世界中の人々に紹介され続けている。米国アカデミー賞では作品賞、主演男優賞、脚色賞、編集賞、作曲賞、 主題歌賞の6部門にノミネートされた感動ムービーだ。
自然災害の多い昨今、私たちは他人事と思っていた(?)ことが自分にも起こり得る確率が高いことに気づいたはず。日常的な地域での防災訓練や在宅非難生活の訓練などを体験することが重要なのは言うまでもない。

※「127時間」(2011年6月18日 日本公開)
127時間 : 作品情報 – 映画.com

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