【シネマで振り返り 53】愛する家族の心に贈り物を残してゆく …… 「アフター・ウェディング」

自分史活用アドバイザー 桑島まさき

2007年10月日本公開されたデンマーク映画「アフター・ウェディング」は、「ある愛の風景」(2007年12月1日 日本公開)の女性監督スサンネ・ビアの作品である。当時、試写室で鑑賞できなかったため、公開直後、都内の映画館で鑑賞したのだが、噂に違わずすばらしい作品で、泣いている観客が目立ったことを覚えている。私もそのひとり。
「アフター・ウェディング」。文字通り、結婚後。デンマークの裕福なある家庭に突如おこる娘の結婚式の後の事件。この世の春を謳歌していた一家が、ヤコブ(マッツ・ミケルセン)というある男の出現によって動揺し心乱されてゆく。しかし、それはすべてその家の主人で成功した実業家ヨルゲン(ロルフ・ラッセゴード)が家族のためを考えて仕組んだことだった……。

ヨルゲンの妻ヘレネはヤコブの昔の恋人で、ウェディングドレスをきて幸福一杯の娘の実父であるヤコブの生還に困惑している。何故、彼がここにいるのか、と。
養父ヨルゲンを誰よりも愛するとスピーチする娘のアナは、実父の出現に驚き、結婚したばかりだというのに思いはヤコブのことばかり。
何も知らずヨルゲンの誘いにのっただけのヤコブは、そこで昔の恋人との偶然(?)の再会に驚き、さらに自分に娘がいることを20年間しらなかった事実に怒りを覚え混乱する。
すべてを偶然の出来事と言い家族の動揺を沈めようとするヨルゲン。
突然の出来事に乱れる人々の複雑な心理を目の動きやクローズアップで静かに表現した演出はあざとさがなく、陳腐な2時間ドラマと一線を画している。
限りある命を思い、残される大切な家族の心に贈り物を残してゆく男の決意を知った時、どれほどの涙を流すだろうか。

ヨルゲンを演じるロルフ・ラッセゴードは「太陽の誘い」(2000年7月1日 日本公開)で、文盲だが賢く心優しく、純粋に女を愛し信じ続ける精神性の高い男を演じたが、本作でもその力量を十全に発揮していて感動的だ。特に、死の恐怖に震え、こられきれずに無念の思いを吐き出し妻の胸で泣きじゃくるシーンに至っては、涙を禁じ得ない。
日本映画「ボクの妻と結婚してください。」(2016年11月公開)など、類似した作品は他にも多々あるが、本作は、アカデミー賞外国語映画賞ノミネートにふさわしいデンマーク産家庭劇の傑作である。
家族の大切さ、人を愛することのすばらしさ、それゆえに生じる孤独。そして、今ここに生きていることのシアワセをしみじみと感じる作品だ。

*「アフター・ウェディング」 (2007年10月27日 日本公開)
アフター・ウェディング : 作品情報 – 映画.com

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


*