【シネマで振り返り 46】嘘も方便、こんな嘘ならついてイイ! …… 「大いなる休暇」

自分史活用アドバイザー 桑島まさき

2005年6月に日本公開された「大いなる休暇」の舞台は、カナダ、ケベック州の人口がわずか125人のサントマリ島。のどかな島は、交通渋滞も殺人事件も無関係。島民は全てにスローペースのスローライフ。ストレスレスだからギスギスすることはなく、島はいたって平和だ。しかし、かつては漁業で栄えたこの島にも不況の波が押し寄せ、島民の多くが失業保険を受けて明日の身を心配する生活を強いられている。
のんびりした島民たちは次第に苛立ちはじめる。そんな時、巨大なプラスチック工場誘致話が舞い込んでくる。この工場が島にできれば雇用がうまれる。だが、工場建設の条件は、「島に定住する医者がいること」だった!
サントマリ島は無医島だ。医者などいなくても大丈夫だったのに、俄かに医者が必要になり、本土から医者を呼び寄せて定住してもらう計画をたてるのだった。そのためには島を好きになってもらわなければならない。そこで、この任務の陣頭指揮をとる町長のジェルマンを始めとする島民たちは一斉に嘘をつき始めるのだが……。

あるつてを使った結果、本土から若き青年医師クリストファー・ルイスが都会に恋人を残し一人で島へやってきた。美容整形医のルイスは、仕事の合間に怪しい薬を吸い、都会の誘惑を楽しんでいた男だ。
ルイス一人のために島民は一致団結して大芝居を始めるのだった。ボロ屋を重要指定文化財にデッチあげ、診療所にはひっきりなしに患者を送り込み、レストランでは彼の好物を人気メニューにすえる。釣りが好きだとわかると釣れるように工夫する。さらには、電話に盗聴器をしかけ反応をみる。主婦たちが、ルイスと都会の恋人の会話をつぶさにチェックし胸ときめかせたりするのは楽しい。
これまで仕事がなくくすぶっていた島民たちは、島の将来がかかっているのだから徹底している。普段、嘘などつきそうもない善良な彼等が一生懸命に嘘をついているのがおかしくいとおしい。さらに島民たちは、ルイスの反応をみて心理戦にでたり、ライバル医者を出現させる逆療法にでたり、なかなか凝ったことまでしている。
何も知らないルイスは島民の親切さや美しく素朴な島を次第に気に入っていく。

これまで随分嘘つきな人々の物語を観てきたが、愛すべき嘘つきたちは初めてみた気がする。人を騙すのは良くないが、こんなに温かく優しい嘘ならついてもいいのではないだろうか……。
本作はカナダ国内で大ヒットし、2004年サンダンス映画祭で観客賞を受賞するなど多数の映画祭で絶賛された、ハートフルコメディだ。監督はジャン=フランソワ・プリオ。
結果としてルイスは都会の恋人に裏切られ傷心の末、人生の選択をするのだが、彼にとってもこの島でのドタバタは、人生の転機となる大きな休暇だったのではないだろうか。

*「大いなる休暇」(2005年6月4日公開)
大いなる休暇 : 作品情報 – 映画.com

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