【シネマで振り返り 39】未来は誰の手にもある ……… 「未来を写した子どもたち」

自分史活用アドバイザー 桑島まさき

今回ご紹介する作品「未来を写した子どもたち」は、第77回(2005年)米アカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー賞受賞の他、多くの国際映画祭で名誉ある賞を受賞した作品だ。監督はロス・カウフマンとザナ・ブリスキ。ブリスキはニューヨークで活躍するフォトジャーナリストで、女優と見紛うほどに美しい!
のっけからインド、カルカッタの売春窟のショットの数々がうつされる。監督自身のナレーションにあるように、それはまさに「別世界」「囚われた世界」「抜け出せない世界」だ。元々、カルカッタの売春婦を撮影するために、実際に売春窟で彼女たちと寝起きを共にしたブリスキだが、次第にそこで暮らす子どもたちに心惹かれるようになったそうだ。

売春窟で働く女たちは皆、代々売春で生計を立てている。そして、結婚し、妊娠し、出産する。女の子たちは皆、学校にも通わず母親の仕事(売春)の手伝いをし、大きくなったら(自分も)売春婦になる。男の子たちは女たちの世話をして暮らす。ここで生きる男たちの妻は皆、売春婦だ。勿論、違法であるがそれしか食べる方法がない。警察に捕まっても、次の日は又、売春婦になっている。その、繰り返し。ここで生まれたら運命は変わらない、抜け出すのは不可能に等しいのだ。絶対的な身分制度の下、社会の最底辺で生きる者たちに選択肢などなく、一生を通してその瞳に映る景色に、さほど変化はない。

そんな状況を目の当たりにしたブリスキ。しかし、過酷な状況だがまだ厳しい社会を知らない子どもたちの姿は実にイキイキとしていて、澄んだ綺麗な瞳をしていることに驚くのだった。そして、選択肢のない世界でしか生きられない子どもたちの未来を思い、そこから抜け出す手段として彼らに夢や希望や自信を与えたいという強い思いから生まれたのが、写真教室だ。
売春窟の中で写真教室を開き、カメラを与え写真術を教える。教育を受けたことのない子どもたちの好奇心は大きく膨らみ、やがて写真というツールを通して外の世界と繋がる喜びを実感していく。別世界を抜け出し新世界へ、動物園や浜辺で写真を撮る子どもたちの喜々とした姿が印象的だ。

子どもたちに教育を受けさせるために学校をみつけ、面倒な手続きに奔走するフォトジャーナリストの四苦八苦ぶりは、複雑怪奇なインドという国の実相を表していて興味深い。学校に入るために子どもたちでもHIV検査が必要なのだから驚く他ない。
又、ブリスキは子どもたちを引き続き援助するために「KIDS WITH CAMERAS」という基金を設立した。これは、社会から見放された子どもたちに写真をとることで自信を与え、撮影した写真の展示会の開催や映画祭への出品などを通して、子どもたちを援助する資金を作り出すという仕組みだ。

写真家だけに、作中の映像は詩的で実にリアルだ。ブリスキの写真教室の子どもたちのその後は様々だ。有名な大学に入学が決まった者もいれば、結婚した者もいる。折角寄宿学校へ入学したものの退学し、再び元の世界で暮らしている者もいる。
しかし、ブリスキの尽力は無駄ではなかった。どんな世界で生きようと希望を持つことで未来は変わると子どもたちに教えたのだから。

*「未来を写した子どもたち」(2008年11月22日 日本公開)
未来を写した子どもたち : 作品情報 – 映画.com

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