【シネマで振り返り 36】どこにでも有るような無いような家族の風景 ……… 「東京家族」

自分史活用アドバイザー 桑島まさき

2012年は昭和を代表する映画俳優・石原裕次郎没後25年、ビートルズがレコードデビューしてから50年の年だった。「○○から●●年」と言うのはたやすいが、気の遠くなるような時が流れている。そうではあるが様々な媒体から彼等の作品・写真・エピソードなどが発信されると、見慣れているためかそうではない気がしてくる。名作とよばれるものを鑑賞するたびにそう思う。

2012年8月2日に英国映画協会発行「サイト・アンド・サウンド」が発表した「最も優れた映画」(世界の映画監督358人による投票)に、小津安二郎監督の「東京物語」が堂々1位に選出されている。これまでずっと「市民ケーン」が首位の座を守っていたようだが、堂々と日本映画が選出されるとは驚きだ。ちなみに「東京物語」が製作されたのは1953年だ。小津監督はこの10年後の1963年に誕生日と同じ日に60年の生涯を閉じる。よって、2013年は小津監督没後50年の年だった。
日本を代表する小津安二郎監督の代表作「東京物語」(1953年)にオマージュを捧げた2013年1月公開の「東京物語」は、小津監督没後50年記念企画で、やはり日本を代表する山田洋次監督自身の監督50周年記念作品ともいえる。

オマージュ作品だけにストーリーは「東京物語」そのまんま、現代版にしているのでわずかに設定を変えただけになっている。
例えば、1953年版は5人兄弟だったが、現代版は3人兄弟。
長男は郊外に住み、開業医として勤務する平山幸一(西村雅彦)。
美容院を経営するしっかり者の滋子(中嶋朋子)。
舞台芸術の仕事をしているが経済的に苦しい平山昌次(妻夫木聡)。
小津監督のマドンナといわれた原節子さんが演じたのは戦死した次男の妻という役どころだったが、本作では次男・昌次の恋人役・間宮紀子(蒼井優)がそれにあたる重要な役だ。

2012年の東京の話題は、なんといっても5月に開業した東京スカイツリー(その次が修復工事を終えた東京駅だろう)。「東京物語」では東京タワーがチラホラでてきたが、本作では「東京の顔」となったスカイツリーが威風堂々とスクリーンに映える!
さらに、2011年3月11日、日本を襲った東日本大震災の影が作中にそこはかとなく描かれる。実際、大震災が起こった時、既に撮影準備中だったが、想定外の事態に陥ったため中断し、2012年に仕切りなおして映画を完成させたという経緯がある。

笠智衆と東山千栄子が演じた夫婦役は、橋爪功と吉行和子が演じる。
子どもたちに会いたくて島から上京してきたのに、都会での生活で忙しくしている子どもたちとすれ違う老夫婦の寂しさ、家族の在りよう。都会の豪華な高層ホテルに泊まっても何もすることがなく困惑する老夫婦の孤独。子どもたちが元気で生活していることは嬉しいのに失くしてしまったモノへの思いが身につまされる。しかし、誰でも似たような思いは経験されたことがあるはずだ……。
郊外の長男の一戸建ての家、長女夫婦の家、次男の狭いアパート、島の実家。様々な家がでてきて、それぞれの営みが描かれる。家族、絆、老い、死といった普遍的なテーマが淡々と提示され考えさせられる作品だった。

*「東京家族」(2013年1月19日 日本公開)
東京家族 : 作品情報 – 映画.com

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