【シネマで振り返り 35】人生はままならないほど愛おしい ……… 「ファミリー・ツリー」

自分史活用アドバイザー 桑島まさき

2012年5月日本公開されたハリウッド映画「ファミリー・ツリー」は、 ある事柄を機に人生を見つめ直し、家族と再度つながることに成功した男の物語である。主演を務めたのはプロデューサーや監督としても活躍しているG・クルーニー。既に「シリアナ」でオスカー(最優秀助演男優賞)をゲットしているが、「役者としての幅を広めた」と絶賛された本作の演技が高く評価され主演男優賞にノミネートされた。残念ながらクルーニーも作品自体もオスカーを逃してしまったのが、記憶に残る作品だった。

改めて説明すると本作は、ハワイを舞台に、妻とかわいい2人の娘をもつ弁護士として働く男が、妻のボート事故を機にこれまで信じて疑わなかった価値観を見直していくヒューマンドラマである。
ハワイ・オアフ島で弁護士として働くマット(クルーニー)は仕事も家庭も順調、その上カメハメハ大王の血筋なので広大な土地を所有するお金持ちだ。売れば莫大なマネーが入り込んでくるので親戚たちのアドバイスどおり売却を考えていた。
ところがある日、妻がボート事故にあい昏睡状態となり介護をしなければならなくなる。そればかりか、介護中、妻は妻子持ちの男と不倫中で、自分と離婚を考えていたという衝撃的な事実を突き付けられる。さらに、2人の娘たちは反抗的で下品な言葉を話す問題児。さらに、妻の不倫を長女や懇意にしている近所の夫婦もとっくに知っていたという。知らぬは自分だけという惨めさ、情けなさ。不愉快さは続く。親戚たちはハワイ王族の先祖が残した土地の所有権をもつ自分を「金のなる木」としか見ていないことを知り愕然。

信じていた者たちにことごとく裏切られたマットは自身の存在意義を疑い、家族、人生、生命を見つめ直す。 怒り、悲しみ、不安、絶望、様々な感情が入り乱れ、まさに人生最大の危機に突入。どん底の中、父と娘は家族の絆を取り戻す旅にでるのだった……。
いつもカラリと晴れたハワイは世界中の人々が観光に訪れ、最近はパワスポとして見直されている。のどかな島で暮らしているので競争など無縁で悩みもなく、そこに暮らす人々は助けあいのんびり暮らしているのではと勝手に思ってしまう。弁護士として働くマットはシャツと半ズボンというカジュアルな服装で、都会のビジネスマンほどではないがそれなりに忙しく働いている。人々が抱える問題はどこもさほど変わりはしない。

クルーニーは、問題を次々に抱えこみ右往左往するお気の毒な中年男を絶妙に演じている。知性と意思の強さを感じさせる濃いめの容貌、洗練された身のこなし、都会的な二枚目がオヤジっぽい早歩き(歩き方がおかしい!)で妻の浮気の真相を確かめに行くシーンは笑える。
監督は「サイドウェイ」のアレキサンダー・ペイン。ゆったりと流れる時間の中で バラバラになっていた家族が絡み合った糸をたぐり寄せるようにまとまってゆく、その心地よさ。どんな重大事件がおきようと、それはそれで愛おしく、スルーしていく人間の逞しさや滑稽さ。家族の歴史は、いつも証を残そうとする者たちの忍耐と寛容によって続いているのではないだろうか。ペイン監督はホントに上手い!

*「ファミリー・ツリー」(2012年5月18日 日本公開)
ファミリー・ツリー : 作品情報 – 映画.com

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