【シネマで振り返り 28】ある家族のクリスマスの物語 …… 「クリスマス・ストーリー」

自分史活用アドバイザー 桑島まさき

「家族とは集団の最小の単位、そして最初の集団、最初の劇場です。家族を取り扱えば、多くの俳優を集められます。家族は劇場のようなもの」……。2010年11月に日本公開されたフランス映画「クリスマス・ストーリー」のプレス用パンフに収録されているフランスの名匠、アルノー・デプレシャン監督の発言である。企画の発端は、フランス映画でアメリカ映画のように、クリスマスに家族が集まり起こる悲喜こもごものドラマ「感謝祭映画」を作りたいと思ったことから始まったそう。
クリスマスを前にして多くのテレビ番組では恋人たち向けのラブストーリー特集が組まれているが、私としてはクリスマスには家族向けラブストーリーをお薦めしたい。

フランス・ルーベの街のヴュイヤール家。現在は年老いた夫妻が2人で静かに暮らしているが、妻のジュノン(カトリーヌ・ドヌーヴ)に重い病気が見つかる。それは遙か昔、夫妻の最初の子どもである長男が発症しわずか6歳で死んだ病気と同じだ。ジュノンが助かる道は骨髄移植しかない。昔、我が子を救うため、夫妻は骨髄適合者が必要になり、そのために俄に子作りに励み次男をもうけた。夫妻も長女エリザベート(アンヌ・コンシニ)も骨髄が適合せず提供者が見つからなかったのだ。しかし、望みを託したにもかかわらず、次男アンリ(マチュー・アマルリック)の骨髄は不一致、むなしく長男は短い人生を終えた……。
ファミリーヒストリー上、最大の悲劇となったこの一件はいつしか家族に暗い影を落としてしまった。その後、夫妻は三男のイヴァンをもうけ、3人の子ども達と幸福に暮らす。「役立たず」の烙印をおされた次男のアンリは、繊細で不器用なため家族の問題児となりずっと浮いてしまっている。
現在はそれぞれ家族をもち独立(アンリだけは妻に先立たれ独身、仕事もうまくいかず、長女に借金した過去がある)、フツーに暮らしていたが、母の病気を機に集まるのだった。
問題は、誰が、どうやって、愛する母を助けるか、だ―――。

キャメロン・ディアス主演の「私の中のあなた」(ニック・カサヴェテス監督)の設定とやや似ているのは確かだ。「私の……」では、白血病の姉を救うため〈作られた〉妹(本人がナレーションで語っていた)が、姉のために幾度も自身の身体にメスをいれ犠牲的人生(本人は肯定していたが)を強いられたかが描かれていた。
本作は、それに少しヒネリを加え人生の皮肉をモチーフに、家族というやっかいな関係を巧みに描いていて見事だ。
「人生の皮肉」とは、かつて、兄を助けるために誕生したのにそのミッションを果たせず、長男は死亡。以後、ずっとその負い目を感じ家族から無視され続けた次男のアンリが、不運の連続の果て、家族の女王的存在である母の一大事を救うキーマンになったことだ。それは、愛する家族からの信頼の回復であり、失敗続きの人生からの再生の絶好のチャンスでもある。

小さい頃、兄の死を間近でみた優等生の長女・エリザベートは、夫は数学の権威、自身も戯曲家として成功、息子のポールは精神的な病を抱えてはいるが、まぁ恵まれた人生を送っている。だが、彼女はいつも不安で何かに覚え、幸福を感じていない。とりわけ、弟のアンリを毛嫌いし絶縁している。そんな弟からの骨髄を愛する母に移植させるなど許せないと思っている。「勝ち組」人生だが、家庭では負け犬。息子のポールは両親に心を開かず、なぜかアンリを慕っているのだった。
三男のイヴァンは中立。誰ともつきあえる無害の人。美しい妻シルヴィア(キアラ・マストロヤンニ)と暮らしているが、この妻をめぐって過去、仲良しの従兄弟と兄と微妙な関係になったことがある。(お人好しなのか、登場する人たちの中で一番わからないのはこの人である。)

クリスマスに集った家族……。皆、よく食べ、よく飲み、プカプカとタバコを吸い(ヨーロッパ的だ!)、よく喋り、家族だけに話題は多い。それゆえに口を開くと衝突が起きてしまう。でも、母を助けたいという気持ちはみな同じだ。果たして……クリスマスマジックは起きるのか?
過去も現在もフランスの大女優でかつて「世界一の美女」と称されたカトリーヌ・ドヌーヴは、本作公開時67歳。依然として美しくゴージャスで存在感があるが、重そうな体型になったのは否めない。腰回りや肩の肉など迫力満点! 役にたたなかった次男を疎ましく思ったり、女の直感で息子の嫁を嫌ったり〈ウーマン〉であり続ける。
対称的に子ども達の父親アベル(ジャン=ポール・ルシヨン)は公平で温厚で親切、家族のムードメーカーだ。
家族ドラマはどんな物語より面白く奥が深い。そのことを如実に納得できるのはクリスマス、正月、お盆ではないだろうか。心に残るクリスマスをお過ごしください!

*「クリスマス・ストーリー」(2010年11月20日 日本公開)
クリスマス・ストーリー : 作品情報 – 映画.com

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


*