【シネマで振り返り 10】どんなに時が流れたあとも、どんなに離れていても ……「きみの友だち」

自分史活用アドバイザー 桑島まさき

人気作家・重松清の原作小説の映画化である「きみの友だち」。交通事故で片足が不自由になった少女・恵美と体が弱いためなかなか学校へいけない由香。それがために周囲から浮いてしまう2人だったが、いつしか2人は絆を深めてゆく。20歳の恵美の現在から始まり、恵美(石橋杏奈)と由香(北浦愛)の10歳から15歳までの友情の日々を主軸に、2人の周辺の少年少女たちのエピソードを絡ませながら描かれる青春映画だ。

2人が出会ったのは小学4年生の時。勝ち気な恵美は自分の足が不自由になったことを由香のせいだとあたることもあったが、どんなに恵美に辛くされても友だちが欲しい由香はじっとガマンするのだった。恵美もそんな由香の優しさにジワリとなり、いつしか2人はいつも一緒にいるようになる……。
2人の同級生・ハナ(吉高由里子)は、親友と思っていた女の子がBFに夢中になって自分の存在を忘れているようで不安。最近は親友と話す時間もない。そんな日々が重なりハナは心因性の視力障害になる。ハナは恵美と由香それぞれに「いつも2人だけでいるのは淋しくないか」と聞くのだが……。

親友が自分から離れてゆく寂しさや不安を抱える少女、親友と思っていた人気者の男の子が自分の手の届かない所へいってしまった(?)悲しみから劣等感の固まりのようになったネガティブ思考の少年、補欠でサッカー部を引退したため鬱屈した思いを下級生にぶつける少年など、思春期を生きる若者が遭遇する出来事や心の揺れを繊細にすくい上げる。それらを巧みに描くことで、どんなに周囲から孤立しても2人だけの時間を大切にし、友情を深めていく恵美と由香のかけがえのない絆が浮き彫りになっている。

子どもの時間は短い。人生80年(いや、90年かな?)と考えた場合、20歳が大人の入り口だとしたら、わずか4分の1の時間しか私たちは子どもでいることができない。大人になった途端、これまで私たちを保護してくれていた社会(大人たち)は責任を要求してくる。短い時間だからこそ人は〈あの頃〉を思い出すたびに、美しく輝きをもった宝物として懐かしく思い出すのだ。

2人が一緒に過ごせた時間は5年だ。悲しいことに由香は、15歳の若さで逝ってしまった。体の弱かった由香にとって恵美は初めてできた友だちだ。恵美は足が悪いとはいえ、生きている。生きてさえいれば、まだまだ友だちに恵まれる機会はある。
でも、忘れない。由香という大事な友だちがいたことを。そう思える友だちが生涯で一人でもいたら、この先、親友とよべる友だちができなくても淋しくなんかない、きっと。そもそも親友なんてそんなに簡単にはできないものだ。

現在、映画やテレビで大活躍中の吉高由里子が、脆さと危うさを秘めた10代を好演している。本作が劇場公開されたのは2008年7月、試写室で鑑賞したのは同年6月頃。鑑賞後、普段何気なく使っている「トモダチ」という言葉が妙に気になったのだった。数年前から故郷の高校の同窓生と集まる機会が増え楽しんでいたが、この年は「卒業後○十年記念同窓会」のプレイベントが故郷で開催され、当時親しくしていたが何故か交流が途絶えてしまった旧友たちとの再会を果たし、感慨に浸ったのだった。
どんなに時が流れても、すぐに〈あの頃〉に戻れるのが嬉しかった。

「トモダチ」ときかれて、すぐに思い浮かぶ人は誰ですか?
あなたには「親友」がいますか?
大事に思う人のために、どんなことができますか?
日頃世話になっている友だちに、すぐにでも想いを伝えよう!

※ 「きみの友だち」(2008年7月26日公開)
きみの友だち : 作品情報 - 映画.com

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