おのやすなり(自分史活用アドバイザー)

今も、昔も変わらず人気なのが”お袋の味”です。

飲食店では、この言葉の持つ力は効果絶大で、多くの人がこの言葉に惹かれ、昼時、都心の定食屋では列が途切れません。

しかし、よく考えてみるとお袋の味は家庭によって違うはずですが、なぜかその言葉に親しみを込めて皆が一様に懐かしむのか不思議です。

味覚は感情で変化する

過去に運営に関わっていた飲食店でメニューのリニューアルを考えていた時、出数の多い商品の改良を検討した時があります。

この時議題に上がったのが焼き餃子でした。

その飲食施設は、中華料理店ではなく温浴施設の中の飲食店だったのですが、餃子はビールの肴としてよく出ていました。

何十種類もある業者から取り寄せたサンプルの冷凍餃子を食べ比べましたが、これといった違いを感じることができず、手間はかかるがいっそ、手作りで行こうということに決まりました。

スタッフに中華シェフはいませんので、独自色を出すために考えたのが、主婦の従業員からそれぞれの家庭のオリジナルレシピを募集することでした。

集まったレシピは15種類、応募してくれた従業員に、それぞれのレシピ通りの材料を持ち寄ってもらい、調理スタッフ立会いのもと試作品を作り、品評会を行い候補を3つに絞りました。

それを、調理担当の下でレシピ化して量産できる形で試作品を作り直し、再度品評会で一つ商品に絞り、商品化しました。

グランプリは野口さんという女性のレシピでした

野口さんは、お子様達は既に成長してお孫さんもおられましたので、最近は家庭で作る機会は減ったということなので、”昔懐かし! 野口家の餃子”として売り出しました。

拝み倒して、嫌がる野口さんの顔写真を使ったポスターをメニューボードに挟み込み、3つある施設で発売したのです。

懐かしのお袋の味”野口家の餃子”は空前の大ヒット商品となり、各店とも従来の3倍以上の憂上げをあげました。

お客様の声を聞くと、多くの方が一様に

”なんか懐かしいーわー!”

そう言って喜んでくださるのですが、よくよく考えると野口家の餃子を子供の頃食べたことがある人など、お客様の中には一人もいないんですよね!

ノスタルジックな思いとは感情です、五感で感じた体験は感情とともに記憶に残ります。

ですから、感情を刺激する情報を与えると、人は五感で感じた感覚を思い出し、その時の感覚が蘇った気になるのですね。

お袋の味という情報はきっと、母親から無意識に受けた愛情の感覚を想起させるので、目の前で起こっている体験を懐かしく、暖かなものに変換してしまうのでしょうね。

インタビューでもマストな質問が”お袋の味”

あまり感情を出さない方をインタビューする際、まるで年表のように理路整然と起こったことを話される方がおられますが、これを文字にしてもあまり面白くありません。

過去の記憶の中で、起こった出来事を感情で聞き出し、文章にする必要があります。

体験した出来事を五感でどう感じたのかを掘り下げて聴きだすと、感情の篭った思い出話につながります。

その中の一つに味覚があります。

”お袋の味”を聞くと大概の人は遠い目をして思いを馳せ、やがて頭の中でその味を思い返し、感情が動きだし、人が変わったかのように感慨深げにお話が始まります。

もちろん、この質問が良い感情ばかりでなく辛い感情だったり、思い出したくても思い出せない場合もあります。

味覚だけでなく、五感でどう感じたのか、それを思い出しながらポツリポツリと蘇る感情を言葉にして頂ければ、その人となりが伺えるお話を聴きだすことができるのです。

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