個人情報保護法において、個人情報を管理する上で義務を課せられる対象となる人、会社等を、「個人情報取扱事業者」と規定しています。本来「個人情報取扱事業者」でなければこの法律に規制されるものではないため、その事業者からは「それは個人情報なので……」という言葉は聞かれないはずです。個人情報保護法成立当初はこの「個人情報取扱事業者」の要件として、保有する個人情報の件数が5000件以上としていましたが、2015年9月の法改正により原則的にこの5000件の要件が撤廃となりました。ただ法改正される以前からこの5000件という壁は特に意識されず、個人に関するデータはすべて「個人情報だから……」という社会全体が保護第一の動きでしたので、今回の法改正について不都合を感じる中小企業等はほとんどないのではないかと思います。

ただこの法律には単に情報を出さない(言わない)というだけでなく、安全管理措置をはじめとする細かな管理規定も定められており、町のお店や零細企業、フリーランスの個人事業主などが実際に法律通りに対応できるとは思えません。ですので、その配慮もされており、改正法は附則(11条)を設け、「(小規模事業者)が新たに個人情報取扱事業者になることに鑑み,特に小規模の事業者の事業活動が円滑に行われるよう配慮するものとする。」と規定し、急速な対応を求めてはいません。ただこの改正はマイナンバー法の改正と同時期のものであり、社会の流れからは今後個人情報はすべての事業者が管理すべきものとなっていくものと思われます。

ある意味、個人情報保護法は過剰な扱い方をされて来たようにも思えましたが、今回の法改正により、名実ともにこの法律が様々な場面で使われるようになります。こうなると事業者が管理すべき個人情報は必要以上に保護され、よほどのことがない限り悪用されず何もかも解決されたかに思われます。情報を悪用するものを基準として考えた場合は確かにこれは言えるかもしれません。しかし、本来情報は公開することで守られることもあるのです。また年賀状やお中元、お歳暮も住所という個人情報を知らなければ贈れません。私が子どものころは当たり前だった学校での連絡網も、個人情報ということで今は多くの規制がかかっています。自治会や町内会がお一人暮らしの高齢者の情報をどこまで持っているのでしょうか。また持っていたとしても活用が出来るのでしょうか。

個人情報保護やマイナンバーによって管理者側の強化が計られた現代の日本が、将来に残すべき情報は規制されたものではなく、個人レベルの記録である自分史や地域史になって来るのではないでしょうか。自分史は究極の個人情報でもあるため、大きな抵抗を感じる人も多くなるのは事実かと思います。ただ逆に大きな価値を感じ、積極的に残していこうという人も必ずいると信じます。

馬場敦(一般社団法人自分史活用推進協議会監事)