自分史と相続

相続のハナシ

自分史には様々な活用があることを述べてきましたが、先日知り合いの弁護士の方とお話する機会があり、その際に私も気付かなかった自分史の新たな活用を発見することが出来ましたのでご紹介したいと思います。

遺産分割

遺言の無い相続においては遺産分割協議という話し合いによって各相続人合意の上相続財産が分配されます。合意が取れなかった場合は法律に従った割合で相続財産を分け合うことになります。兄弟姉妹においては基本的には平等であり、両親の相続を受ける際には同居別居を問わず均等に分割されます。
実際には同じ子どもとはいえ、親との関わり方は様々なはずであり、相続分割の現場ではかなりのケースでもめるところです。

親との関わり方で分配は変わる!?

実は法律上においては親との関わり方に伴った相続財産の分配を認めています。
被相続人の生前において、被相続人の財産の維持又は増加に貢献した者がいる場合、それを遺産分割において考慮するというもので民法904条に規定されています。
また民法903条には特別受益といって生前に既に被相続人から財産の一部を譲り受けているような場合についても考慮されるという規定もあります。

このようなことが兄弟姉妹の中共通の認識だったりすれば何の問題もなく解決するのですが、話し合い(遺産分割協議)で解決することは稀です。自分だけがそのように思っているということは少なくなく、親に貢献していたつもりでも別の兄弟から見たら親に優遇されているように見えるようです。例えば親と同居していれば色々と大変なこともありますが金銭的な援助を受けることもあるはずです。

当事者同士ではこの辺りについてまとまるはずもなく、相続が揉めるといった話の大部分はここの争いが多いのです。そしてこの寄与分、特別受益をめぐり裁判になってしまうこともあります。

自分史と相続

ここまでが前振りで、自分史の役割はここから登場します。
親の自分史を作る場合、貢献してくれたことをその中で語ることで今まで主観で語られていたことが、事実を証明する書類として遺るものとなります。前述した弁護士の方からは遺された自分史が裁判においての重要な証拠として利用することが出来ると言われました。確かに日記を書いている人ならまだしも日常の記録などは書面として残すことは少ないはずです。

また自分史は人生のストーリーになっているので部分的な記録(たとえばメモ書きのようなもの)に比べ、矛盾がない場合は事実として第3者からは受け入れやすいと思います。
遺言書にはその結果しか書かれていないので法的には有効であっても物議をかもすことがありますが、遺言に書かれた結果を導いた過程の書かれた自分史を遺すことで誰でもが納得できる相続が実現出来るのです。
誰かを有利にするために意識的に作る自分史をお勧めしているのではなく、自分が与えてもらったことや与えたことに正当な評価を加味した正しい相続が行われることが大切なことであり、事実をありのままに表現する手段として自分史が活用されることは自分史活用アドバイザーとしては大変嬉しい限りです。

あなたの築いた財産を引き継ぐことまでをご自分の使命とお考えの方は、是非自分史でそのお考えにも触れてみてはいかがでしょうか。

馬場敦(一般社団法人自分史活用推進協議会理事)