思い出の場所を巡ろう

私が所属している東京都行政書士会町田支部では、昨年より法教育出前授業ということで、町田市の小学6年生に対し「きまり」や「法律」に関する授業を行っています。授業には講師のほかにサポートスタッフや見学者など約20名の行政書士が参加します。私は子どもがいるので小学校にはよく出入りするのですが、多くの方は小学校に入るのは20~30年ぶりということで、校舎内を懐かしんで見て回っていました。

設備は新しくなっているものの、学校の雰囲気は基本的に今も昔も変わりません。逆に大きく変わっているものなどは、「昔はこうだったんだけど今はこんなに変わったのか?」などと昔を思い出す強い動機にもなります。先日行った学校に参加した方はトイレに入った際、「手洗いの鏡の位置ってこんなに低かったんだ……」としみじみ語っていました。そして「小学校のころ、トイレはみんな和式だったので入り難くて嫌だったなぁ」なんていう話に始まり、ほかの方々も校舎内に貼ってある掲示物を懐かしそうに見ながら、「こんなの書いたなぁ」という発言も聞こえてきました。今回対応してくれた小学校の先生も私よりずっと年下なのですが、なぜか学校の先生というだけで話しているとスッと自分が子どもになってしまう感覚があります。皆さんそれぞれの記憶の中の小学校時代が蘇えってきているようでした。

上記のような記憶の蘇りを体験することは想像だけでは難しいのですが、場所を変えるだけで簡単にできてしまいます。自分史活用推進協議会の前田義寛代表理事が提唱しているものに『マッピング自分史』というものがあります。これは自分のかつて住んでいた街や住まいの絵を自分の記憶で書いていくことでその時代が蘇ってきて、それが自分史を書く際に大きく役立つといったものですが、前述した小学校のようにその場所に行ってみることが一番ではないかと思います。これは自分史を作る過程における材料探しでもあり、自分史を書く動機づけや書くきっかけとして有効な方法かと思います。

・生まれた街に行ってみる。
・昔遊んだ公園に行ってみる。
・昔家族と行った旅行先に行き同じホテルに泊まる。
・昔よく行った食堂で食事をする。

ホテルや食堂などは存在を確認できただけでも感動するはずです。多少遠くて費用がかかったとしても(むしろかかったほうが)大きな価値が得られます。

私は一度、当時小学6年の息子をつれて、自分の子ども時代を過ごした街に行ったことがあります。息子に自分の話をしながら巡った小旅行でしたが、あと何年かするとこの旅行が息子にとっての思い出の場所になり、2人でまた訪れると違った楽しみ方ができるのかと思います。ぜひ思い出の場所を巡って自分史を書くというよりも、自分史の中に浸る体験をしていただけたらと思います。

馬場敦(一般社団法人自分史活用推進協議会理事)