自分史活用アドバイザー 桑島まさき

学生時代の私はコテコテの体育会系だったため文化祭になると出番がなく、文化祭の間中いそがしそうに学内を飛び回っている学友がアホらしく思っていたイヤーな女子だった。学校の行事だから一応参加をし、俄かに設置された食堂で学友たちが作るうどんを食べたり、デンデケデケデケ~やっているライブをみたり、演劇部の芝居をみたりしたものだが、今ひとつ楽しめなかった。だから現在、高校時代の文化祭の思い出といわれても印象に残っているものはほとんどない。ただ、弦楽クラブの催しものがある教室に、「クラブ弦楽」と書いてあったのがおかしく思えた。
しかし、2005年夏に劇場公開された映画「リンダ リンダ リンダ」を試写室で観た時、もし一度だけ戻りたい時に戻れるなら、高校時代に戻り文化祭をもう一度体験したい!と思った……。

とある地方の男女共学の高校。進学高でもスポーツエリート高でもないこの学校の特徴は、毎年ド派手な文化祭を開催すること。
ここに、5人の女の子たちによるガールズバンドがあった。高校生活最後の文化祭で自分たちの腕前を披露すべく練習していたが、ギターの萌が指を骨折し出場を断念してしまった。それにブチきれたボーカルの凛子(三村恭代)も離脱。残された恵(香椎由宇)、響子(前田亜季)、望(関根史織)の3人は突如バラバラになったグループの憂き目にガックリし、出場を辞退するしかないところまで追い詰められていた。その上、似たもの同士の凛子と恵が壮絶なケンカまでしてしまい、その噂は学内にも広まってしまった。
文化祭前日、ここまでやってきて最後の舞台に出られない悔しさ、絶望、思わぬトラブルに見舞われ、ヤケクソで韓国からの留学生ソン(ペ・ドゥナ)をグループに誘い、出来たてのホカホカバンドは文化祭最終日のステージを目指して、連日猛練習を繰り返すのだった……。

文化祭前日から最終日までの4日間のガールズバンドの汗と涙と笑いの青春の日々を爽やかに、ユーモラスに、ちょっぴり切なく描いた青春バンド映画だ。
ソン役の韓国の人気女優ペ・ドゥナが、唐突にガールズバンドに加わり、彼女の視点で少女たちの関係性や恋や価値観などが語られていく。ソンは音楽など全く無縁だった。
よくわからないままに「ハイ」と答えたためにバンドにひっぱりだされ、しかも大事な
ボーカルをやることになる。しかも、音痴だ。だが、一人でカラオケに入り練習し、ガールズと行動を共にすることで、最高に楽しく熱い瞬間を体験することになる。本作はペ・ドゥナ(主演は彼女だ!)のマンガチックな演技に支えられているといっても過言ではない。

ところで、ガールズが突如コピーすることになったのは、ブルーハーツの「リンダリンダ」。
ブルーハーツが結成されたのは1985年2月。1987年5月、この楽曲で彼等はメジャーデビューを果たした。日本が好景気に沸いていた時代だ。だが、劇中のガールズバンドはその時代を知らない。なのに、あの異常な熱気ムンムン、バブリーな時代の空気を再現するかのように、少女たちは完全燃焼し輝いてみせた。ブルーハーツの楽曲に導かれるように。
そう、やればできるのだ! 青春のただ中にいるガールズが示してくれたもの――それは、しょぼくれた時代の沈滞ムードに慣れきってしまっている私たちにカツをいれているようではないか。思い出せあの時代を、と! 達成感溢れるガールズのあのキラキラした顔がやけにまぶしく映った。こんな瞬間を経験した人は、その後、どんな困難に遭遇しようと、きっと乗り越えられるだろう。一生の宝物だ。

※ 「リンダ リンダ リンダ」(2005年7月23日公開)
リンダ リンダ リンダ : 作品情報 – 映画.com